すべてが終わってしまう前に

□限界を超えるのが、試練だ
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「青峰の模倣…!?」


「そんな…できるのか!?」


「…そもそも、黄瀬君の模倣というのはできることをやっているだけで、できないことはできません」


「は…は!?」


「つまり…簡単に言えば【のみこみが異常に早い】ってこと。NBA選手の模倣とか自分の能力以上の動きは再現できない」


「現に、僕やキセキの世代を模倣できていなかった」


「だが…逆に言えばそれでもやろうとしてるってことは、【できる】と信じたってことだ」


残り一秒というタイミングで今吉がボールを放り、ブザーと共にリングを抜けた


【うおーーー入った!!ブザービーターだ!!】


【第2Q、終了です。これより10分のインターバルに入ります】



「……あの4番……。34対43…今のブザービーターは痛かったね」


険しい表情のまま雲雀は今吉を見ていたが、インターバルに入り身を翻して会場を出て行く
飲み物を買って外に出ると震えている携帯をズボンのポケットから取り出して耳にあてた


「……久しぶり」


【そうだね。今、仕事?】


「いや、インターハイの海常と桐皇戦を観にきてる」


【……涼太と大輝か。涼太はどうだ?】


「今の時点だと何とも言えないね。でも、彼も天才の一人だよ。呆気なくは終わらないさ」


【贔屓目なのは変わらないみたいだね】


「用はそれだけ?そろそろインターバル終わるんだけど…」


【そうか。悪かったな、貴重な時間を】


「別に。……多分、この試合、どちらが勝っても青峰と黄瀬は次の試合には出られない」


【そんな試合、面白く無いな。僕も出場する意味がない】


「紫原はいいの?」


【敦は僕と戦いたがらないからな。一言言えば不参加になるだろう
じゃあ、また】


「そう。じゃ」


プツンと通話が切れた音を数秒聞いてから来た道を戻り会場に入ると第3Qが既に始まっており、笠松から黄瀬にボールがパスされた瞬間だった


「……」


黄瀬がふわりとスピードを緩めてブロックしようとする今吉の目の前からボールを左手から右手に移し抜いた


「(これは、まさか青峰の…!?)」


「…片鱗を見せ始めた」


ガッ、と黄瀬を止める為に今吉が突っ込むとファウルが付けられる。雲雀は観客席に座りながら小さく呟いた


「…まだ青峰と若干ズレがある」


「え、でもカンペキ青峰みてーじゃん!」


「…いえ、雲雀君の言うようにたぶんまだ不完全よ」


「え!?」


「その証拠に、速攻とかで青峰君以外がマークに来た時しかやってない。きっと本人の中でまだイメージとズレがあるのよ」


「つまり…黄瀬が青峰に再び1対1を仕掛けた時が、模倣完成した時だ」


黄瀬がツーショットを二本とも決めて更に点差を縮めた。しかし、青峰も負けじとシュートを決めて14点差になる


「バスケはすぐに決着はつかない。15点が精々デッドラインだね」


雲雀が目を向けたまま離さないコート上では笠松や早川、森山が次々と好プレーを見せていく


「(黒子っちの言ってたこと、最近ちょっとわかったような気がするっス。黒子っちの言ってた【チーム】…そのために何をすべきか…そして、オレが今何をすべきか)」


「……来た。…意外と速かったね」


「じゃあ、そのオレが相手なら、どうなるんスかね?」


黄瀬が青峰の前に立ち告げた言葉に雲雀は小さく息を吐いた



ダムッ、キュッ…

左から右への切り返しをして、更に左へと切り返しにより青峰の右側を抜いた


「超えたね、黄瀬」


「なっ…」


「ついに黄瀬が、エース青峰を…抜いたあ!!!」


「今の動きは完璧だね。文句なしの模倣だ」


「決めろ、黄瀬ェ!」


「調子に乗ってんじゃねェぞ、黄瀬ェ!!」


「ダメーーーッ!」


ピーッ!と笛が鳴り響くが黄瀬のシュートはまだ終わっておらず、ファウルされながらも右手で背中からボールを投げる。それはリングを簡単に抜けたためにバスケットカウントになった


「ディフェンス、黒5番。バスケットカウント!ワンスロー!!」


「決まった…!?バスカンだ!」


「いや、それより……青峰に課せられたファウルの数が四つ。……あと一つで退場処分か……
模倣されて、青峰の攻撃が減速する」


分からなくなってきたね、と笑みを消して黄瀬のワンスローを見据えた


「ワンスローも決めたー。これで差は一ケタだ!!」


「……4Qを残しての9点差…か」


呆然と立っていた青峰に今吉がパスをするが、それに気づくのが遅れて青峰の手を掠めた


「うわぁあ、海常カウンター!」


「なっ…(青峰がファンブル!?)」


「〜〜〜!!(絶対止めなきゃ!)」


桜井が黄瀬を止めようと前に出るが黄瀬はステップを遅らせてから隙を見て桜井を抜いたのを視認した雲雀は苦笑いを浮かべた


「青峰の緩急をも真似た、か。つくづく恐ろしい幼馴染だよ
まさか、最低速を青峰よりも下げて同じ速度差を再現するなんて……」


「おおお!」


「ぶちこめ、黄瀬ーー!!」


「ったく(4ファウルは正直オレのドジだった。けど…これは黄瀬の望んだ展開か…?違うな…チームが勝つための戦力として受け入れてはいても、本心じゃこうなってほしくはなかったはずだ。雲雀の嫌いなプレイの一つだしな。とは言え、まさかあんなツラされるとはよ
しかもなんだ、さつき。その心配そうなツラは。なんだそのあわてたツラは。どいつもこいつも……カン違いしてんじゃ、ねーーよ!!)」


青峰がゴール寸前だったボールを弾いた。そのボールは客席へと飛ばされた



「4ファウルぐれえで腰が引けると思われてたなんてなめられたもんだぜ。けどなあ、特に気に食わねえのがテメェだ、黄瀬

いっちょ前に気ィ遣ってんじゃねーーよ、そんやヒマあったら死にもの狂いでかかってきやがれ」


3Q終了の笛が鳴り響いた……
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