すべてが終わってしまう前に

□一つ相談
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「お疲れ様でしたー!」


収録を終えてスタッフ達に頭を下げながら部屋を出るとマネージャーの結城ミカが雲雀に話しかける


「恭ちゃん、次の収録は明後日だけど大丈夫?」


「明後日なら大丈夫です。でも、来週から試合なので、その間はできれば収録控えてもらえると助かります
あと、その翌週からはテスト期間に入ります」


「わかったわ。スケジュールをまた整理してメールで送るわね」


自身の手帳に書き込みながら確認を取ると雲雀は上着を羽織って一礼した


「お願いします、ミカさん」


「あ、そういえば…黄瀬くん、控え室で待ってくれてるわ。意外と撮影が早く終わったって
私はこれからレコード会社との取引があるから送っていけないけど、黄瀬くんがいるなら安心ね」


「黄瀬が?分かりました。じゃ早く行かなきゃ…。ミカさん、お疲れさまです」


「お疲れさまー」


足取りを軽くしながら出て行く雲雀の背中をミカは微笑ましそうに見ていた




「黄瀬、いる…?」


「あ!収録、終わったんスか?」


「うん。ごめん、待たせたでしょ?」


「平気ッスよ!じゃ、送っていくッス」


ニカっと笑顔を見せた黄瀬が雲雀の荷物を持って控え室のドアを開き廊下を鼻歌を歌いながら歩いていく
ビルの自動ドアを潜って雲雀は帽子と眼鏡を付ける


「そういえばさ、涼太は変装とかしないよね」


「んー…別に公にしてるんでそっちの心配はないんスよねー」


「いっその事顔出ししようかな…」


「俺、ずっと気になってるんスけど、顔出ししていない恭が何でパパラッチに追いかけられるんスか?」


「なんで、って…あれ?そういえば……スタッフ以外は知らないはずなのに…」


ザッ……


「!」


「そこか!」


二人ならんで河川沿いを歩いているとふと黄瀬が斜め後ろに向かって回し蹴りを出すと物音と共に男が倒れた


「!確か、音響の……」


「スタッフに混じって、恭の顔を知ってから追いかけ回してるってところッスかね?」


「ひぃっ…!ごめんなさい!!もうしませ…「二度と恭に近づくんじゃねぇよ、てめぇ。今後恭に近づいてみろ、タダじゃおかねぇ」


「っっ!!」


雰囲気の変わった黄瀬にただ後ずさるしかなかった。雲雀はカメラを手にとって川へと放り投げる


「どうする、こいつ」


「恭が決めたらいいッスよ。恭を狙ってたらしいし」


「……じゃ、このまま放置で」


「いいんスか?」


「うん。写真は公開してないからまだセーフだし、それに……
(これに懲りて僕や涼太に近づくことないだろうし)」


「それに、で何スかー!?ものすごく気になるッスよー!!」


「なんでもないよ。…さ、帰ろっか」


「恭ー!」


「なんにも?で、帰るんでしょ?」


「教えてくださいッスー!!」


「嫌だー」


夕日に照らされながら逃げる雲雀の後ろを黄瀬が走って追いかけていく
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