すべてが終わってしまう前に

□これからもよろしくお願いします
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「お疲れさま、ヒバリン」


「あ、みんな!来てくれてありがとう。あと、そのヒバリンっていうのやめてよ、さつき」


「だって可愛いじゃない。かっこよかったよ、ライブ」


「輝いていたね、雲雀。楽しませてもらったよ」


「赤司……」


「これから忙しくなるだろうけど、バスケや勉強も頑張りなよ。僕の言うことは?」


「絶対、でしょ?一応、バスケを第一に考えてるから安心しなよ
僕だってそう簡単に負けを認める程人間出来てないし」


「ならいい。歌手活動でも頂点に立つつもりだろう?」


「当然。そのつもりで僕はこの仕事を続けてるんだから」


雲雀と赤司の会話が落ち着いたのを見計らった青峰と緑間、黒子が口を開いた



「明日、1on1しようぜー」


「切り替えが早すぎるのだよ。雲雀、次会う時は負けないからな」


「望むところだよ。
(そういえば明日青峰の誕生日だっけ。付き合うのも悪くないかな)
じゃ、明日、いつもの公園でね」


「やれるもんならやってみろ。じゃあな、ゆっくり休めよー」


「ちゃんと疲れを取ってくださいね。あと、体調には十分気をつけてください」


「ヒバリン、元気でねー!」


「ありがと。……紫原、重い」


紫原は覆い被さるように雲雀の頭に自分の顎を乗せていつもと同じ声の調子で口を開く


「ヒバちん、バスケしてるのもいいけど歌ってる時も楽しそうだったー
そんなに楽しいのぉ?」


「楽しいよ。でもバスケしてる方が楽しいかな…みんないるし。あ、そうだ…紫原、これあげる」


持っていた荷物から紙袋を紫原に差し出した。彼は中身を見て目を輝かせる



「お菓子だー。こんなにたくさん、いいのー?」


「ファンからもらったんだけど、洋菓子は食べないからね。だから紫原にあげる
ただし、食べ過ぎないこと」


「んー…わかった。ヒバちん、ありがとー」


「どういたしまして」


「淳、俺たちも帰るぞ」


「はーい。じゃあね〜」


「またね。さて……」


チラリと隣に目を向けた雲雀の視線の先にはムスッと頬を膨らませている黄瀬の姿


「いつまで拗ねてるのさ」


「ライブを見てるうちにだんだん恭が離れてくような気がして、なんか寂しいっス…」


「ふぅん。僕はそれを前に経験してるんだけど?」


「?どういうことっスか?」


「涼太がモデルになって、僕はただバスケに明け暮れて、涼太がファンに囲まれたり雑誌に載る度に隣に居ていいのか、とか釣り合わないのに、とか今まで何度も思ってたんだけど?」


「……本当っスか?」


「本当。だから涼太は僕の側にいていいんだよ
大好きな幼馴染なんだから」


「!!恭、大好きッス!」


「はいはい」


「あ、そうだ。これをあげるッス」


「…?ピアス……?」


「オレと同じやつっス。ちなみに右耳につけてくれたら嬉しいなーなーんて。オレも今日開けたんスよ
あ、今日はこれから撮影なんで行ってくるっスね、じゃっ!」


左耳につけたピアスを見せて説明を終えると雲雀の手にピアスを握らせるようにしてから逃げるように去っていく黄瀬の背中を見送りながら雲雀は首を傾げていた


【一方黄瀬は…】



「(うっわー…ついにやっちまったス……右耳に付けてくれるッスかねー……いや、でも恭だから付けないってのも…うわ、何か気になるッス……!!
さすがにあの場で撮影とかってのらは嘘って分かるっスかね…!?)」


近くの地面に座り込んで思考をひたすら巡らせていた





〜翌日〜



「恭ちゃん、それは?」


仕事の為、事務所にやってきた雲雀がジッと見つめる先にある握られたピアスに気づいたミカがふと声をかけた


「これ、黄瀬からもらったんだけど…右耳に付けてくれ、って……
…両親には右耳なら開けていいって喜んでたみたい。歌手って開けて大丈夫かな…?」


「……右耳に?事務所的には目立たなければ大丈夫だけど……ねぇ、恭ちゃん、片耳ピアスの意味は知ってる?」


「片耳ピアスの意味?そんなのあるの?」


「男性がピアスを開ける場合、左は【勇気と誇りの象徴。右はゲイの印】そして……女性は【左はレズの印。右は優しさと成人女性の証
】らしいわ
ちなみに、基本的な意味合いとしては【右耳=守られる人、左耳=守る人】だそうよ。愛する女性を【己の勇気と誇りを掛けて守る】という逸話もあるの
だから素直に意味を受け取るなら告白、ね。かっこいいじゃない、黄瀬君」


「〜〜っ!?」


「恭ちゃん、開けていいの?開けるなら私が開けてあげるけど…」


「……お願いします…」


顔を俯かせた雲雀の顔が真っ赤になっていることにミカは微笑みながらわかったわ、と短く返した
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