紅の十字架

□警戒要請
2ページ/3ページ

《こちら本部。5時25分に28番ゲート開通します》


「了解。こちらは現在異常なし
予定通り向かってます」


馬車に揺られながら雲雀は夜空に浮かぶ月を見上げていた


「雲雀くん……」


「……」


「(恭弥、あれから人と付き合うのがめっきり減りましたね)」


雲雀はここ数日の間、最低限の人付き合いしかしなくなっていた
それを不審に思う者もいれば、安堵する者もいたが……
しばらくして教会の近くで馬車を降りた一行はキエやマオサと別れ教会へと向かう


「こんな夜中に訪ねて大丈夫かしら?」


ギッ……


「ご苦労さまです、エクソシストさま。司祭のフェデリコです」


手を差し出すフェデリコをミランダはしばらく考えてから挨拶をすると握手をする


「…………。いえ、その……?」


「??」


「握手じゃなくて、司祭の手に自分の暗証番号を指でかくんですよ」


「これから、ゲート地点では毎回、味方の識別を行います
暗証番号は任務の度変更され、仲間内でも非公開が原則です
なので忘れると大変ですよ」


「えっ」


アレンに続いてリンクが説明をすると再びアレンが説明を始める


「ホラ、任務前に8桁の番号、教えられたでしょ?」


「あっ、そっ、そうだったわ。すみません、私ったら」


「いえいえ
番号を一度でも間違われると、用心のためゲートの部屋へお通しすることができませんのでお気をつけください」


「えっと…8…3の…」


「ミランダさん、声!」


アレンが注意するも時すでに遅し。苛立った神田が声をあげた


「《暗証》のイミ、わかんねェのかよッ
黙ってさっさとかけ!!」


「ひっ。ご、ごめんなさいっ」


「コラ!」


「なんだよ?」


「あなた方、同じパターンで喧嘩するの今日で何回目ですか」


火花を散らせるアレンと神田に特に突っ込む様子のない雲雀。読書をしながらリンクが続けた



「まったく…あなた方は、仮にも教皇の威信の象徴であるローズクロスを掲げた存在なのですから、それに見合う品位というものを少しはもって…」


「煩いな」


「はい?」


「うるせェんだよ、お前ら」


「僕達の知ったことじゃない。そんなことはどうでもいいよ」


早々に暗証番号をフェデリコの手にかいて教会の中へと足を踏み入れた



「ごめんなさい。私のせいね…神田くんと雲雀くんの期限を悪くしてしまったわ」


「…ミランダのせいじゃないですよ。神田をイラつかせてるのは、僕かな…恭弥もどうすればいいのか分からないんですよ、きっと…」


雲雀とアレンが新本部でクロスと対面した次の日に教団幹部とエクソシスト全員がルベリエに呼び出された


「アレン・ウォーカーは14番目というノアの宿主であることが判明し、雲雀恭弥も様々な記憶を持ち合わせていることも同時に判明しました

ですが、表向きは今後も彼らには教団本部に在籍し、エクソシストの役務を続行してもらいます

なお、この件には箝口令を敷き、中央庁及び教団幹部、そしてエクソシストのみ知るものとします

今は、アレン・ウォーカーの奏者の能力と雲雀恭弥の戦力が教団にとって必要であり、これ以上の減少は痛手であることから、中央庁はノアと異物をしばらく飼う結論に至りました」


ルベリエの説明に皆がざわつく
コムイの隣に立つアレンは顔を伏せ、神田の隣にいる雲雀は不機嫌そうにルベリエを睨み付けていた

「コムイ室長」


「只今をもってエクソシストに教団司令官として無期限の任務を言い渡します。アレン・ウォーカーが14番目に覚醒し、我々を脅かす存在と判断が下された場合、及び雲雀恭弥が不審な行動を見せ教団を襲う素振りを見せるようであれば…」


次の言葉がコムイの口からは出てこなかった


「(言え、今は、こうするしか彼の生きる道はない)」


「その時は僕を殺してください」


「必要以上に僕に関わらないでもらいたいね。それで、ユウに殺してもらう」


静かにアレンと雲雀が口を開いた


「でも、そんなことにはならない。14番目が教団を襲うなら、僕が止めてみせる」


「僕は元々異常なんだ。だったら、ユウに殺してもらうか自分で死ぬ道を選ぶ」


二人の言葉に全員が息を飲んだ

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ