紅の十字架

□とある記憶
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「体が少々重いでしょうが、害はありません
左手を拘束するためだけの術ですので」


「着替えがあるなら、その後にかけても…」


左手を術によって拘束され、ぜぇぜぇ、と息を切らすアレンと警戒を解く様子のない雲雀を他所にルベリエはお茶を飲んでいた



「できんことはないでしょう」


「(仲間なのに、ここまでするなんて
イヤ…違うのか。仲間かどうか、この人達には疑われてるんだった)」


「アレンに関しては、これが目的か……
尋問、拷問…どれかな…」


雲雀は嘲笑しながらある過去を思い出していた




「ずっと一緒よ、マナ。彼はまた、戻ってくるもの
信じてる。ずっと、待ってる…」



「…マナは、おかしくなったのは、あの時だ……
覚えてたのかな……」


「クロス・マリアン元帥がこの扉の先におられます
入られよ」


「……随分と厳重な見張りだね」


「マナは、「14番目」と関わりがあったんですね」


「ああ。「14番目」には血を分けた実の兄と、寄り添い続けた恋人がいた
「14番目」がノアを裏切り、千年伯爵に殺される瞬間までずっと側にいた、たった二人の人物
それが、マナ・ウォーカーとリリィだ」


「!」


「兄弟…マナと、「14番目」が
師匠は、ずっと前から知ってたんだ…?」


「知ってたさ、ずっと。恭弥もな」


「……っ」


「恭弥、も…?」


「オレ達は「14番目」が死ぬ時、マナを見守り続けることを奴と約束した
そうしていれば、いつか必ず、マナとリリィの元に帰ってくると、お前が、オレ達に約束したからだ、アレン


いや?「14番目」。そして、「リリィ」」


クロスは振り返り雲雀とアレンを見ると、アレンは目を見開き、雲雀は顔を俯かせて嘲笑した


「知って、たんだ……僕の元の器が、あの人だってこと……」


「(今、何て言いやがった)」


「恭弥の寄生型のイノセンスはリリィのものだ。それが扱えるようになったということは、記憶があるんだろう?」


「…………」


「お前に至っては、覚醒はまだだろうが、自分の内に「14番目」の存在を感じ始めてるんじゃないのか、アレン」


「は?何をいって…」


「とぼけんな。お前は奏者の唄を知っていた。それは奴の記憶だ
お前は、「14番目」の《記憶(メモリー)》を移植された人間
──「14番目」が現世に復活するための宿主だ」


「やっ、ぱり……。《彼》の…」


「方舟で、奏者の唄を知っていたのも、弾けないはずのピアノが弾けたのも、「アレン(おまえ)」じゃない。全部、「14番目」の《記憶(メモリー)》だ
          ・・
お前あン時、あそこで何か見ただろ」


「……?アレン……?」


反応のないアレンに雲雀がゆっくりと視線を向けると衝撃的な事実の連続にアレンは固まっていた


「オイ」


すっ……


「(はっ)」


バチィン!!


「とまんじゃねェよ。話が進まんだろうが」


「イッ、ッタ!
い、移植って…いつ…」


「あ?あ───…ワルイがそこはまったく知らん」


「はぁあッ?」


「まて、大体はわかる。多分アレだ、「14番目(やっこさん)」が死ぬ前だ」


「それ、わかんないんじゃん!!恭弥は分かりますか!?」


「とりあえず、死ぬ前でしょ」


「恭弥も師匠と同じこと言ってんじゃないですか!」


「ああ?ンだテメェ、ワルイつっつんだろうが、トバせッ、そこは!」


「(アッバウト……)」


「フン…俺だって半信半疑だったんだ。お前が現れるまではな」


「伯爵を殺そうとした奴の有様は地獄だった
マナとリリィの3人でノアの一族と殺し合いの逃亡生活
「14番目(奴)」にとって《いつ》《ダレ》になんて構っちゃいられなかったんだろ
チャンスがあったときにたまたま手近にいた奴を宿主に選んだ。テメェの手で伯爵を殺したい一心でな」


「それが…僕…?」


「運がなかったな
移植された《記憶(メモリー)》は徐々に宿主を侵食し、お前を「14番目」に変えるだろう
兆しはあっただろ?

恭弥、これはお前にとって他人事じゃねェ」


「は……?」


「ノアじゃないが、無理矢理移植された脳はお前の自我をも奪う」


「!!そういう、こと……何なんだよ、それって……ユウの為に生きてきた僕が馬鹿みたいじゃない……っ」


「マナが、愛してるっていったのは、僕かそれとも。どっちに…」


唇を噛み膝を付いた雲雀と顔を床に向けるアレンにクロスが近くに寄って腰を下ろした


「マナは「14番目」が死んだ日におかしくなった。リリィは行方を眩ました
過去を覚えていたかどうかもわからん
ただ外野で見てた俺にはな

……皮肉だな
(こんな子供(ガキ)どもだったとは)
宿主や、移植なんざ、もっとくだらない奴らがなってりゃよかったのに」


クロスはアレンと雲雀を抱き寄せて顔を胸へと埋めさせた


「ティエドールのことも笑えんな、まったく…


【自我が奪われたり、「14番目」に為ったら、お前らは大事な人間を殺さなきゃならなくなる】
…って、言ったら、どうする…?」



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