紅の十字架

□新たな一歩
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3ヶ月後──……



「ジョニーが…?」


「ああ…でもリーバーが承諾してないらしい。ジョニーは一貫して、家業を理由にしているようだが…

本当はアレンを追いかけるつもりじゃないかってな…」


フランスのプロヴァンスで、リナリーとマリが並んでベンチに座っていた


「団員のなかでも科学班の人間は機密情報や知識を多くもっているから、退団にはとくに厳しい制約がつき、破れば一生監獄に入れられる
班長はそれを心配しているんだろう」


「仲間って、なんなのかな…
私は何も言えなかった

恭弥くんの苦しみにも気づいていたのに、大丈夫って言えなくて…いつの間にか消えちゃって……
アレンくんも……、アレンくんを信じるっていいながら、あの時…何も言わずに私たちのもとから去ろうとする彼に、何も言えなかったの」


3ヶ月前、アレンが方舟を使って教団を去った出来事を思い出しながらリナリーは言葉を続けていく


「同時にわかったの。私には、彼を助ける覚悟なんてできてなかったんだって
《仲間だ》なんていっといて、私は、アレンくんと恭弥くんより教団を選んだ………っ」


目に涙を溜めて俯くリナリーの頭にマリが手を乗せてぐりぐりとなで回す


「それは悪いことじゃない。おまえにはコムイや長年共に過ごした教団の皆との絆があるんだから
私もそうだ。皆との絆がある
だからこうしてここにいる
アレンとの絆だってなくなったわけじゃない。ブックマンやラビ……
神田と恭弥との絆。共に戦い、共に笑い合った、多くの仲間との絆



どんなに離れても、我々は繋がっている」


マリはそれに、と続ける



「恭弥の苦しみはあいつだけのものだ
俺も、知っていたからこそ何も言わなかった」


「……」


「恭弥は強い。いつでも、どこでもそれは変わらないさ、きっと」


「そうだね…」


「行くか。そろそろ本部のゲートが開く時間だ」


「うん」


「ジジが待ちかまえてるぞ、絶対。受話器のむこうで大泣きしてたから」


「じゃあ、大変だね」


「はは」


「昨日ちゃんと寝といてよかった」


「はい、ボール。あまり人に迷惑をかけないように遊びなよ」


「!」


聞こえた声にリナリーはそちらを向くと目を見開く


「?どうした?リナ……」


マリが歩みを止めて耳を澄ませる
リナリーとマリが立ち尽くすのを見ながら目の前にいた声の主が柔らかい笑みを浮かべた


「ばかやろう……どうして戻ってきた…?おまえ達は……もう…………自由に…なって、よかったんだぞ………っ」




「「《おかえり》じゃ(ねーのかよ/ないの)?」」




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