紅の十字架

□響くは閉幕のベル
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「もう、待つだけの人生は嫌だよ……」


静かな部屋に瓦礫の崩れる音と共に響いたのは一つの声


「…こんなに煩くしたの、誰?」


「「!!」」


その場にいた神田とラビ、コムイはいるはずのない人物を目の前に驚愕の表情を見せた


「遅くなって、ごめんね…」


「……遅すぎるんだよ、馬鹿恭弥」


「うん…ごめん

でも、今だけは無茶を許して。今の僕はイノセンスがない。無謀だってのも分かってる……
それでも、ここは僕の居場所なんだ…。受け入れてくれた時からそれだけは変わらない」


穏やかな表情から、真剣な眼差しになり、コムイへと近づいた


「それにしても、どんな状況?」


辺りが所々崩れている教団の様子に雲雀は顔をしかめたその時、頭上の壁にアレンが吹き飛ばされてきた


「アレンくん…っ」


「はぁ、は…」


コムイの側に打ち付けられたアレンの体は痛々しいほどに傷だらけで、動くのも難しいほどだった



「このキズ…こんな状態でどうやって動いて…!?」



ガクンとアレンの体が立ち上がるのを見て雲雀は違和感を感じた
それは、まるで操られる人形のような姿
不自然な動きのままアレンの手が退魔の剣に伸びる


「アレンの体は、無理矢理イノセンスで動かしてるんだ
僕も同じ状況を何度か経験してるから、言っておくけど……彼の体、限界に近いよ」


「なんだって…!?やめるんだ、アレンくん!!」


コムイの制止もアレンには届かず、彼はレベル4に向かっていく


しばらくしてから、リナリーのイノセンスが発する激しい光が雲雀達の視界に届いた


「リナ……?リナは、イノセンスとのシンクロを解除したんじゃ……」


「ルベリエのやつが、言いくるめて…リナリーにまたシンクロをさせようとしてるんさ」


「!…それで、リナを拒絶したら……っ」


「行ってやれ…コムイ

あいつはお前の為に生きてる…わかってんだろ…そばにいてやれよ、兄貴だろ…」


ラビの言葉にコムイは困惑し歯噛みした


「………ッ。……ボクは、どうしてやればいいのか…わからないんだよ」


「「何を…今さら…言って(やがる/んだい)、このシスコン!!」」


ドカッとコムイの背中を蹴り飛ばしたのは神田と雲雀だった


「側で聞いてたらうだうだうだうだ!何、君にとっての教団はなんなの?」


「テメー、何のために教団に入ったんだよ」


雲雀と神田に言われてコムイはハッと気づいた


「たった一人の家族の為に、入ったんでしょ
なのに、ここで立ち止まってる暇があるのかい!?」


「!!」


コムイはその場から駆け出し、教団に入った理由であり、最愛のリナリーの元へと走っていく



「手のかかるシスコンだね、まったく」


「恭弥、なぜこっちに来た」


「…夢を見た。笑ってる夢。でも、誰もいないんだ…独りで、笑ってた…ただ狂った人形のように
……独りじゃ、笑えないのにね
それを現実にしたくない。それだけ
研究室や他のみんなは?」


「婦長達は地下に集まってるさ。研究室は…」


「……そう
僕がレベル4の動きを遅くする」


「無茶だ!そんなの、恭弥が敵うようなやつじゃ…」


「分かってる。でも、お願い……戦わせて
それが今僕に出来る最大のことだから」


「…止めるべきだと、頭では分かっている…だが、今の状況じゃ何を言っても無駄なんだろうな


……行ってこい、恭弥」



「ありがとう
行ってきます、ユウ」


雲雀は地面を思いきり蹴るとレベル4の目の前に現れた


「あらてですか?」


「気持ち悪いヤツ
…君の相手は僕がしてあげる」


「わたしにかてると?」


「もちろん」


「えくそしすとなら、ころしてあげます」


「やってごらんよ。──僕の安眠を妨害した罪は重いんだ」


雲雀は体を回転させて踵落としをレベル4へと繰り出す
レベル4はそのまま地面へと叩きつけられた


「なかなかやりますね
なまみのこうげきをわたしにあてるとは」


「(ほとんど効いてない、か…
別に、倒せなくていい。時間を稼ぐだけでいい)」


「なにをかんがえているんです?」


バキッ!


「……っ!」


レベル4が攻撃をすると今度は反応が遅れた雲雀は壁へと打ち付けられた


「……っのやろ…」


「いたみをかんじていない…なるほど。あなたがはくしゃくさまのいっていた、ひばりきょうやですね」


「それがどうしたんだい。まだ、終わってないよ」


身を屈めて雲雀はレベル4との間合いを詰めてから体術で戦闘を再開する


「(やっぱり、今までの奴等とは桁違いだ…どうやっても力負けする)」


「これでおわりです」


「クスクス……」


レベル4の攻撃を雲雀が間一髪で避けるその表情には笑みが浮かんでいた


「なにがおかしいのです?」


「《すぐにまた会えるよ、千年公…》」


「なにをいっているのです?」


「!…何が?
(今、一瞬意識が……)」


避けた攻撃は背後にいたアレン達の元に向かっていた
退魔の剣で受け止めるアレンの後ろから、神田とラビがアレンの体と剣を支える


「ふんばりやがれ…っ」


「今はお前と恭弥しかいねーんさ…っ」

「ぐ…っ、おぉぉおおお!」


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