「雪舞う幸せ」



 12月、街中が光に包まれる季節。
 帝国歌劇団花組の姿は舞台の上にあった。
 明日、12月24日の1日限定の舞台「奇跡の鐘」の練習中だ。
 1年に1度とはいえ妥協はしない。
 かつ念入りに、何度も何度も練習を繰り返す。
「俺が口を挟めるところはないな…。」
 そう呟きながら、大神は稽古の終了を告げた。

 明日の舞台の準備はほぼ終わっている。
 後は打ち上げとパーティーの買い出しのみだ。
 事務的な作業を三人娘に任せ、大神は買い出しに出かけようとした。
「隊長!」
 誰かに呼ばれて足を止める。
 振り返るとレニが駆け寄ってきた。
「レニ、何かようかい?」
「ボクも買い出し手伝うよ。」
 明日に備えて稽古を早く切り上げたつもりだったんだが…と思いつつ、大神はレニの申し出を断れなかった。
「ああ、それじゃあよろしく頼むよ。」
 2人は買い出しに出かけた。


 12月23日、快晴。
 ここ数日の天気は良好で、今日は雲ひとつない。
「今年はホワイトクリスマスにはならなそうだね…。楽しみにしてたんだけど。」
 一通りの買い物を終え、ベンチに腰掛けながらレニは呟いた。
「曇り空よりはいいと思うぞ。」
 そんなフォローになっていないフォローをする大神。
「そうだレニ、誕生日プレゼント、何か欲しいものはあるかい?」
 プレゼントを用意していないわけではない。
 何か別に欲しいものがあれば、と思い声をかける。
「誕生日…プレゼント…?」
 レニはそう言って何かを考える。
「………。」
「………。」
 しばし沈黙。
「…今年はボクも隊長にプレゼントを渡したい!」
 レニはぱっと顔を輝かせ、提案する。
「俺は…レニと一緒にいられたらそれだけで十分だけど。」
 大神は率直な気持ちを述べる。
「ううん、何かものを渡したいんだ。」
 大神の瞳を真っ直ぐと見つめる。
 自分にプレゼント、…となると。
 大神はあることを思いついた。
「それならプレゼント交換をしよう。」
「プレゼント…交換?」
 レニが首をかしげた。


 12月24日。
 舞台「奇跡の鐘」は拍手が鳴りやまぬ中、幕を閉じた。

 舞台の片付けも終わり、花組の面々、そしてかえでさんや三人娘が楽屋に集まってきた。
 ここでクリスマスパーティー、そしてレニの誕生日会が行われる。

 パァン…ッ!

 誰かがクラッカーを鳴らした。
「誕生日おめでとう、レニ!!」
 そして次々とレニへ祝福の言葉がかけられる。
 打ち上げやクリスマスパーティーを兼ねているとはいえ、メインはレニの祝福だ。
「ありがとう…、皆。」
 レニは皆に感謝を述べる。
「はい、レニ!アイリスからのプレゼントだよー!」
 アイリスから大きな箱を渡される。
「これはあたいからだぜ。」
「こっちはうちからやー。」
 あっという間に、レニの周りはプレゼントの山になってしまった。
「皆、ありがとう。」
 レニはとても幸せそうだった。
 大神はそんなレニを見つめていた。
「おいおい、いっぺんに渡してちゃレニも大変だろ。せっかくの料理が冷めちまうぞ。」
 米田さんだ。
「そうですよね。先にお料理食べちゃいましょう。」
 プレゼント大会はひとまず中断して、先にご馳走を楽しむことにした。

 火照った身体を冷ますため、大神はテラスにいた。
 途中で抜け出して良かったのかな、と思いつつ。

 ガチャ…。

「!?」
 音がした方を振り向くと、レニがいた。
「レニ、どうしたんだい?」
「ん…。隊長を捜してた。」
 レニが大神の隣に寄って呟いた。
「そうか…。」
「……。」
「レニ。これ。」
 大神はポケットに入れていたプレゼントをレニに渡した。
「ボクも。隊長にクリスマスプレゼント。」
 レニも、持っていたプレゼントを大神に渡した。
 このプレゼントは買い出しの後に、内緒で買いに行ったものだ。
 2人は照れて笑いながら、プレゼントを受け取った。
「同時に開けようか。」
「うん!」
 せーの、と、同時に開封する。
「あ、イヤリングだ。」
「ペンダントか。」
 大神はレニにイヤリング、レニは大神にペンダントを選んでいた。
「「あれ?」」
 よく見ると、いや、よく見ずともわかる。
 自分が選んだものと同じ形のモノだった。
「ははは、何だかペアルックみたいだな。」
「うん…。嬉しい。」

「…微笑ましい光景ですわね。」
「中尉さんは押しが足りませーん!」
 2人が楽屋にいないことに気づいた面々は、2人を捜してこっそり盗み見していた。
 花組の皆も、大神とレニの様子が気になるようだ。
「あなたたち、邪魔しちゃダメよ。」
「そうですよ。楽屋に戻りましょう。」
 せっかくの誕生日、せっかくのクリスマス。
 2人の邪魔になるようなことはせず、大人しく見守ることにした。
 ……。
 …。

「あ、誕生日プレゼント!」
 “プレゼント交換”を意識していたので、誕生日プレゼントのことを失念していた。
 プレゼントを交換するのだからそれはクリスマスプレゼントで、誕生日プレゼントのことではない。
 大神が、しまった!という顔をレニに向けると、レニはそれを見透かしていたかのように微笑んでいた。
「隊長と一緒にいられたからそれでいいんだ。」
 レニは大神に抱きついた。
「(…やられたな。)」
 そう思いつつ、大神もレニを抱き返した。

 2人を祝福するかのように、雪が舞った。




 あとがき
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炎山さんに捧げます。
「レニの誕生日会」。

漫画版持ってなくてすみません(=_=;
お題とズレて…ますよね。
“プレゼント”がゲシュタルト崩壊しました。
イヤリングとピアスどっちがいいんでしょう。

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