「誰の皆の」



 ドッカ〜〜〜〜〜ン!!

 大帝国劇場のとある一室から、何やらが爆発する音が鳴り響く。
「また失敗してもた〜〜!」
 爆発は紅蘭の部屋から。
 それは日常茶飯事なことなので、誰も不思議に思わない。
「やっぱりあれはああした方が…いやいや…。…ん?何や?」
 紅蘭は、先ほどの爆発で壊れた容器の中に、見慣れる液体があるのを見つけた。

「何なんやろ、これ…。液体なんか使ってへんし、そもそも紫の液体て…。」
 小腹が空いたので食堂に立ち寄った紅蘭は、その紫の液体が入った小瓶を眺めてみる。
「毒とかじゃないやろうし、何かで効力試さなあかんな。」
 その後、流し台で発明のことを考えていると、何かを思いついたらしく、小瓶をその場に置いたまま自室に戻って行った。


 数十分後、食堂にさくらたちがやって来た。
「本当にご馳走になってもいいんですか?」
「ええ、私たちから巴里の皆さんに歓迎の気持ちです。…全員そろってはないですけどね。」
 そういった会話の後、さくらを始め、すみれ、マリア、織姫がお菓子作りを始める。
 さくらやマリアの指示のもと、作業は順調に進んでいく。
「あ、カンナさん、そこに砂糖を少々加えて混ぜてください。」
「おう。」
 そう言い、おもむろに側にあった小瓶を掴み、それを入れる。
 ドバッ
「…え、紫?………ぇーと、砂糖砂糖ー…。」
 カンナは何も見なかったことにした。

「さぁ召し上がれー。」
 テーブルの上にはお菓子が盛りつけられていた。
「うわー、美味しそう〜♪」
「ふむ、やはり日本の料理は独創的だな。」
 皆で食べ始める。
「美味しい〜♪これはコクリコやロベリアさんにも食べさせなくちゃ!」
「ふふ、そうですね。」
 会話を弾ませながらお菓子を頬張る8人。
 しかし…。
「これだったら毎日食べられ……あれ……何だか眠…く………。」
「おい、エリカ、食べながら寝るなどはしたな………い……。」
 しばらくして、8人は眠ってしまった。


「楽しかったね〜!」
「うん!でもこんなにいっぱい買ってもらっちゃって良かったのかな。」
「ははは…。」
 大神と一緒に買い物に出かけていたアイリス、レニ、コクリコが帰ってきた。
「あ、何かいい匂いがする〜。」
 アイリスが食堂から漂うお菓子の匂いに気がついた。
「そういえばさくらくんたちがお菓子をふるまうって言ってたっけ。俺は荷物を置いてくるから先に行っておいで。」
 荷物と大神を玄関に残し、3人は食堂へ向かった。

「あれ?皆寝てるのかな?」
 近づくにつれ、食堂のテーブルで、誰ひとり動いていないことに気がついた。
 妙な胸騒ぎがしたレニは、テーブルに向って走り出す。
「さくら!マリア!…皆起きて!」
 駆け寄って名前を呼びながら揺さぶる。
「う…ん…。」
 レニの声に皆が目を覚ましていく。
「ねぇ、何があったの?」
 そう問いかけたレニを8人が見つめる。
「レニ…。」
「な、何?さくら…。」
 さくらの眼のいつもと違う様子に、レニは一瞬たじろぐ。
「レニ…、可愛いわね。」
「!?」
 さくらのその一言と同時に、腕を掴まれ、身動きがとれなくなる。
「ふふ、当然じゃないですか。私のレニさんなんですよ〜。」
 エリカも負けじと身を乗り出してくる。
「ねぇ、皆どうしちゃったの?」
 異変に気付いたアイリスとコクリコがレニとの間に割って入ろうとするが、すぐに押し出されてしまった。
 どうやらこの症状はさくらとエリカだけではないらしい。
「レニは渡さないわ!」
 マリアが銃を取り出して叫ぶ。
「飛び道具なんて卑怯だぜ。正々堂々勝負だ!」
 そう言って、カンナがマリアの銃を弾く。
 それが合図となったのか、さくら、すみれ、エリカ、グリシーヌもそれぞれどこからか愛用の武器を取り出す。
 こうして、よくわからない争いが勃発してしまった。
「ねぇ、本当に皆どうしたの?レニはアイリスのだよ〜!」
 アイリスはさり気なく自己主張してみる。
 しかし、
「それは聞き捨てなりませんわ。そう思うのならこの戦いに参加しなさいな。」
「う…。」
 どうやら勝者がレニの所有権を持てるようだ。
「こんなのやめようよ。」
「すまぬな。これは大事なことなのだ。」
 何を言っても切り捨てられる。
「アイリス、おにいちゃんを呼んでくるね!」
「それじゃあボクはかえでさんを呼んでくる!」
 アイリスとコクリコはレニを置いて、それぞれ食堂を出て行った。
 よくわからない争いの中、織姫は逃げないようにとレニの傍にいた。
 しかしそれを快く思わない他の面々は、まずはと織姫を脱落させる。

 どれくらい経っただろうか、激しい争いで相討ち、消耗しきった面々を背後から襲い、なんと花火が勝利した。
「これでレニさんは私のものです。…ぽっ。」
 そう言ってレニに抱きつきかけた時、アイリスたちが戻ってきた。
「い、一体何が起こったんだ…?」
 アイリスに連れられやってきた大神には現状が把握できない。
「…花火が勝ったみたいだね…。」
 コクリコとかえでも到着する。
「あれ?皆何してるんや?紫の液体が入った小瓶知らへん?」
 そこに紅蘭もやってくる。
「何も入ってないけど、小瓶ならここにあるよ。」
 花火に抱きつかれたまま、争いの中キッチンの方に隠れていたレニが答えた。
「空?もしかしてこれ使ってお菓子とか作ったんかいな。」
「何が入ってたの?それとこれって関係あるの?」
 レニが訊く。
「…所謂惚れ薬ってやつみたいでな…。」
「惚れ薬!?」
 しばらくして、花火をはじめ8人はまた眠りについた。


 紅蘭曰く、あの紫の液体は恐らく惚れ薬で、目が覚めて最初に見た人を好きになるらしい。
 幸いなのは、完成品ではないため効力は数十分ほどだったことだ。
 しばらくして8人が目を覚ましたが、先ほどのことは何一つ覚えていなかった。
 この騒動の元凶として、紅蘭には一週間発明禁止令が出された。



「はぁ…。」
 夜、何だか眠れないレニは、中庭で一人佇んでいた。
「(今日は色々あったなぁ。まさかあんなことになるなんて…。)」
 今日の出来事を振り返っていると、背後で足音がした。
「レニ。」
 足音は大神だった。
「レニ、眠れないのかい?」
 レニの隣に座る。
「うん…。」
「まぁ無理もない…か。」
 レニは月を見上げる。
「ボクは…。皆とは仲間だったり、友達だったり、家族だったり、そんな関係でいい。」
「……。」
 大神は無言でレニを見る。
「でも…。」
「大丈夫。俺はずっとレニだけ見てる。」
 そう言って大神はレニの頭を撫でた。
「……。」
 月の淡い光が二人を照らしている。




 あとがき
40000hit
炎山さんに捧げます。
「レニ争奪戦」、勝者は花火、オチは大神。

指定がなかったのでSSにしました。
久しぶりに書いたので…。
争奪戦って言ったらこんなのしか思い浮かびませんでした(^^;

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