「レニの心」



「レニ、今から出かけるのか?」
 外出着でロビーの方に走っていくレニを見て、大神はそう訊ねた。
「隊長!」
 大神に呼び止められたレニは、進行方向を大神の方へ変える。
「ラチェットと昴が帝都に来てるからね。織姫と一緒に、ちょっと会いに行ってくる。」
「そうか…。」
 大神はそう言いながら笑顔がのぞくレニの頭をそっと撫で、レニと視線を合わせるように姿勢を低くする。
「仕事じゃない時や二人きりの時は“一郎さん”だろう?」
「うん…。」
 目の前でそんなことを言われてはレニも顔を赤くするしかない。
「それじゃ、行ってらっしゃい。」
「行ってきます。」
 軽く口づけを交わし、レニは再びロビーへ走っていった。

「レニ、遅いでーす!」
 先にロビーで待っていた織姫は若干諦めながら言った。
「ごめん、織姫。それじゃあ行こう。」

 レニと織姫がやって来たのは銀座にあるカフェ。
 中にはもう懐かしい顔ぶれが待っていた
「あ、ラチェット、昴お久しぶりで〜す!」
「久しぶり。」
 レニと織姫はラチェットと昴と同じテーブルにつき、久々の再会を懐かしんだ。
「ホント、会うのは何年ぶりかしらね。」
「初めて会った頃は、こうやって皆でお茶するなんて夢にも思わなかったでーす。」
「ふふ、そうね。」
 カップを片手にラチェットが微笑む。
「私たちも変わったものね。」
「でも昴は相変わらずだね。」
 レニが昴を覗き込むように言った。
「確かに見た目はあんまり変わってないかもしれないけど、中身は随分変わったわよ?」
「まぁこうしてお茶してるってことは変わったということなんでしょーけど。」
「それよりもレニが変わり過ぎだと僕は思うが。」
 昴の言葉に、レニに視線が集まる。
「そうね、会う度に変わっていってるわね、レニは。」
「そうですかー?」
「キミはいつも一緒にいるからわからないだけだろう。」
 欧州星組時代、機械のように過ごしてきたレニ。
 服装も部屋も機能重視で、笑顔も感情さえ乏しかったレニ。
 今ではおしゃれを楽しみ、笑顔がとても似合う女性になった。
「…花組の皆や隊長に…出会えたからだよ。」
 満面の笑みでレニは言った。

「ところで2人はどうして帝都に?」
「もちろん仕事よ。本当は大河くんと昴で来るはずだったんだけど…。」
「直前に風邪で倒れたんだ。隊長としての自覚が足りない!」
 昴は腕を組んだ。
「本当はそのタイガーさんと行きたかったってことですか?」
 紅茶を飲みながら織姫が訊く。
「違う、大河は大河だ。それ以上でもそれ以下でもない。」
 昴は扇子を広げ口元を隠しそう答えた。そして、
「そういえば大神一郎は大河の叔父だったな。帝都と巴里をまとめる有能な人物と聞くが―」
「戦闘に関しては有能よね。」
 ラチェットが答える。
「それ以外は全然ダメで〜す。戦闘や舞台はともかく、私生活はお話にならないですねー。」
 織姫は両手を広げて首をふる。
「そ、そんなことないよ!」
 レニが身を乗り出して叫んだ。
「隊長は…、一郎さんはいつもボクを大切に思ってくれてるんだ。確かに普段はだらしないところがあるかもしれないけど、でも戦闘や舞台は真剣でカッコいいんだ。ボクが失敗したりした時はいつも傍で支えてくれるし、楽しい時は一緒に笑ってくれるし。戦闘でケガをした時はつきっきりで看病してくれるし…。
 あぁ、もちろんボクも一郎さんを大切に思ってるよ。今ボクがこうしてここにいるのは一郎さんのお陰だしね。言葉では言い表せないけど、とても大切で……。
 そういえば、この間ボクが中庭でフントと寝てたらいつの間にか一郎さんが割って入っててね。フントに嫉妬しちゃったみたいで、なんだか可愛いなぁって。可愛いと言えば、昨日―」
「レニ、それ惚気でーす…。」
「あ………。」
 織姫の一言で我に返ったレニは、顔を真っ赤にして俯いた。
「レニをここまで変えるとは…、大神一郎、興味あるな。」

 その後しばらく話をした後、レニと織姫はラチェットと昴と別れ、帰路についた。
「ねぇ、織姫、ボク惚気のつもりなんてないよ。」
「レニにその気がなくても、こっちには十分惚気で〜す。」
 織姫は呆れ口調で言った。
「毎日イチャイチャしてるところを見せ付けられた上に、惚気話までされちゃ身が持ちませーん。」
「ごめん…。」

「でも、レニが、2人が幸せなら、それはそれでいいんですけどね〜。」
「ありがとう。やっぱりボクは皆に出会えて良かった。」
 2人の笑い声が夜の帝都を包み込んだ。




 あとがき
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炎山千六さんに捧げます。
「大レニ+織姫か昴絡み+レニ無自覚惚気」でSS

お題を見た瞬間、欧州星組メンバーでお茶、というのが浮かびました。
大神さん、出番最初だけでごめんなさい。
ちょっと欧州星組の話がメインになっちゃってますね(汗
レニが……。

久々に書くと…難しい。

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