「冬の日」
冬。
「奇跡の鐘」の公演を終えて、今年も残すところあとわずかとなっていた。
もう正月も目の前だ。
そんなある日、大神は正月の買い出しに出かけていた。
「もう年の瀬かぁ、早いなぁ…。」
そう思いつつ、大神は冬の空の下、足早に歩き始めた。
いつの間にか街もすっかりお正月モード。
買い出しや大掃除をしているらしい人も多く見かけられる。
「えーっと、今日は何を買えば………あれ?」
買い出しメモも取り出そうとコートのポケットに手を入れるが、何も入っていない。
慌てて他のポケットにも手を入れて確認する。
だが、ない。
「もしかして落としたのか…?」
大神が焦っていると、後ろから声が聞こえてきた。
「隊長ー!」
振り返るとレニがこちらに走ってくる。
「レニ!?どうしたんだ?」
大神の元に辿り着いたレニは、息を整える。
「隊長…、これ、忘れ物。」
レニは紙切れを大神に渡した。
買い出しメモだ。
「あ…。」
「机の上に置きっ放しだったよ。何を買う気だったの?」
レニがいたずらに微笑みかける。
「はは…、まいったな。」
「ボクも一緒に行っていい?」
「もちろん。」
2人は並んで歩き始めた。
「くしゅんっ!」
レニがくしゃみをした。
「寒いかい?このマフラーを―…」
「それじゃあ隊長が冷えちゃうよ。」
大神が自分のマフラーをレニに渡そうとしたら、レニに制止される。
そして「あっ」とレニがそのマフラーを手に取り何かをしようとする。
一方を大神の首に巻き、もう一方を自分で巻こうとする。
しかし身長差があるので届かない。
「届かない…。」
レニはマフラーを大神に戻し、肩をすくめた。
「……。」
大神は何も言わずレニを抱き寄せる。
「!…隊長?」
レニは驚き大神を見上げる。
「これなら寒くないだろう?」
「うん。」
2人はお互い照れた表情だ。
そしてそのまま歩き始めた。