アクエリオンEVOL2

□モグラの初恋
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その後は幼い俺にとって恐怖の連続だった







暗い道に、時折聞こえる酔っぱらいの声



化粧の濃いおばさんに香水臭い女の人








なにもかも、俺には敵に見えてしまい


とうとう俺は我を忘れて走り出した








もう、気付いているかもしれねぇけど





その時俺は、自分の来た道を忘れてしまい



今度は学園にも、家にも帰れないと思い

泣きじゃくった









「わぁああっ
ここどこ、ぅうっ、ママ・・・おやじぃいっ」








お袋のことをママと呼んでいたのは


恐怖政治があったからであり、俺が好き好んで呼んでいたわけじゃないからな?








「どうしたんだい坊や?
迷子かな?おじさんが一緒に連れて行ってあげるよ」



「ひっく、おっさんだれ、?」



「フフフ、私は親切なおじさんさ
飴もチョコもあるから、おいで坊や?」







突然俺の前に現れた



胡散臭い、いかにも変態と言う顔をしたスーツの男







「お、おれっしらない人についていくなって言われたからっ」



「そうなの?
でもおじさん、君の知り合いと知り合いなんだけどな〜」



「え、おっさんがっこうのかんけーしゃ?」



「学校・・・うん、そうだよ坊や!」








そんな訳あるか!!!



と、今の俺なら言えるものの



その時の俺の不安感と、知らない土地での恐怖に勝てる訳がなく






座り込んでいた場所から立ち上がり


そのおっさんに着いて行こうとした時だった・・・








「まって・・・!!」



「え・・・」







目の前に、フードを着た前髪の長い子が


空から降ってきて、俺とおっさんの間に入ってきた・・・






前髪と同じく、綺麗な太陽のような色をした羽が見えたような気がしたが


その姿を見た瞬間、どこか安心感が心に満ちた







「邪魔をしないでくれるかな、君?
そこをどきなさい」



「・・・」



「悪いね
私は君みたいな子には興味がないんだ
遊びたいなら他所に行け」



「え・・・?」






さっきまでの優しい表情が消え


目の前のおっさんは、俺にとって恐怖の対象そのものの顔をし




黙り込んだフードの子を睨みつけた






顔を隠すように伸びた前髪のせいで表情が解り辛く


なにを考えているのか読み取り辛かったけど





こちらを振り返ると




俺の手を引っ張って走り出した





きっと、助けに入ってくれたんだろう










「なっ!!!
待て、このガキ!!!」








多分、表情は見えなかったけど


この子は俺と同じで怖かったんだと思う





繋いだ手から、カタカタ震える振動と



走りながらチラッと見えた表情は

青ざめていたのだから







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