アクエリオンEVOL2

□月夜の晩
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―カイエン編―







俺の一族は、エレメント能力以外にも


ある能力を引き継ぎ、生を受ける





この、聖天使学園に通うのも

実はその能力が関係しているのだが・・・



俺はある能力が大嫌いだっ






エレメント能力も、はじめの頃からあまり好きにはなれなかったが



こっちは別問題・・・





ある能力と言うのも

今では殆ど見なくなったとされる、吸血鬼を退治するもので


俺自身、本当にこの能力が使えるのかは知らない





一度、幼い頃に親父が使っているのを見たが



あまり見ていいものではなかった






だから俺は、吸血鬼なんてどうでもいいし

いくら悪い者でも、害をなさないのなら放置しておくつもりだった・・・




今までは









「アマ、タ・・・?」



「っ?!!
カイエン、やっぱり君はそちらの人間なんだね」



「どう言うことなんだ・・・
なんで、なんでお前がっ吸血鬼なんだ!!!」








妹に手を出す悪い虫で


でも、どこか放っておけず

つい口を出しては怒鳴ってしまう相手・・・



よく身体がふらつき、よく倒れる軟弱な男






それが目の前で、俺が倒さなくてはいけない敵の姿になって

存在していた









「お前は、普通のエレメント能力者じゃなかったのか・・・アマタ?」



「違うよ・・・
同時に能力を持ってしまった異端児
でも、純吸血鬼だから」



「なら、お前は今まで人の血を?」



「ははっ
俺にはそんなことをする勇気はないよ」



「ならお前はどうやって生きてきたんだ?
吸血鬼の主食は、人の血だろ?」



「言ったでしょカイエン・・・
俺は異端児だから」









徐に、アマタは自身の腕を噛んだ



呆気にとられていたが

アマタの身体は、自己再生していき




あっという間に元に戻った









「これで分かったでしょ?
俺は異端児なんだ・・・
人の血を飲まず、自分の血だけで息ができる」



「だからと言って、自分の身体をっ」



「これしか、方法がないんだ!!!
普通の人として生きたいのにっ
俺はこうしていないと、人として生きられないっ」








はじめて、アマタが本気で怒鳴り


涙を流す姿に



俺はどうしてか、黙って抱きしめることしかできなかった








「ぅっ・・・俺だって、衝動的に人の血を呑みたい時だってあるんだ
その度に、俺は人じゃないんだって実感して
俺が俺でいれなくなる・・・っ」



「お前はちゃんとした人だ」



「違うっ!!!
カイエンだって、何度か反応したでしょ?
本当は俺が吸血鬼だって・・・」



「残念だが、俺はそんなことに興味はない」



「え・・・?」



「お前が吸血鬼だったとしても
お前はお前だ
現にお前は、人を襲わずに自分の血肉で生活している」



「だからって、俺がこれから人の血を奪いに行くかもしれないでしょっ」



「かもな
だが、アマタ・・・俺がいる限り
お前に辛い思いはさせない」







本能は、目の前にいるアマタを倒さなくてはいけないと


どこかで考えているはずなのに





身体は俺の気持ちに正直で

アマタの口を俺の肩にあてた








「な、にっするんだカイエン!!!」



「いいから、また貧血で倒れるぞ?」



「違うっ
俺が言いたいのは、なんでこんなことをするのかって」



「俺はお前に、これ以上苦しんで欲しくない」



「っ
もし、これで俺がカイエンの血を飲んだら
本当に俺は人でいれなくなるんだよ!!?」



「バカを言うな
お前は、どんなことがあっても人だ
それに・・・お前はお前だ」



「っ、」









漸く大人しくなったアマタは

その大きな瞳から涙を流しながら口を開いた



そこには、やはり見間違うはずのない小さいながらも尖った牙が存在した








「ん、」



「グっ」







首に走る痛みは一瞬で、医務室で打たれる注射の方が痛いな・・・



などと考えながら

俺の首から離れ、血を飲み終わったのだろうアマタは


顔を赤くさせながら見上げてきた







「あ、あのっカイエン・・・ごめん」



「なにがだ?」



「だって、その
・・・カイエンの血が美味しくって、飲み過ぎちゃった」



「・・・」









―月夜の晩―









その後、ハンターと吸血鬼の甘く濃い夜が始まったとかなんとか・・・――








(カ、カイエンっ!
あっ ダメ、動いちゃっ――)



(アマタ、お前は俺の獲物だ
俺からは逃げれん・・・)



((その発言って、普通俺が言うんじゃ)ぁあ!!)








(完)




―――

――










イケイケGOGO!なカイエン様が好きになってきた件・・・←






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