カゲプロ

□不器用で優しい君
1ページ/1ページ







「本当に、お前って不器用だな」


「えー?なに言ってるのシンタローくん?」






ソファに座るカノを抱きしめながら、顎をカノの頭の上に乗せる。





「重いよー」


「我慢しやがれ」


「くすぐったいんだけどー?」


「そうか」


「痛い」


「どこが?」


「・・・心が。なんちゃってー」


「へー」


「・・・なんでさっきより強く抱きしめてんのさ〜」


「お前を抱きしめてんじゃねぇよ。
お前の心に手が届かねぇからこうして抱きしめてんだ」


「変なのー」


「お前に言われたくない」


「シンタローくんひっど〜」


「そうだな」


「・・・」


「・・・」






カノが黙り込んでしまったが、そんなに悪い沈黙ではない

そう感じていると、カノの方から口を開いた





「べ、別に」


「ああ?」


「本当に酷いとは思ってないよ」


「・・・ふ
俺ちょっと傷ついたから慰めてくれよ?」


「え、理不尽なんだけど〜」


「慰めてくれないのか・・・」


「ちょ、顔埋めないでって!・・・恥ずかしいっ
仕方ないから〜、特別に僕が慰めてあげる」


「ん」


「・・・なんで両手、広げてるの?」


「俺も特別、お前が落ち込んで見えるから」


「そんなことないよ〜
本当にシンタローくんって変なの〜」


「そうかよ。」






広げた両手の中に入って来るカノは、俺より小さく


俺が抱きしめてやると、おずおずと言った風に抱きしめ返して来た。






「はは、言った割に抱かれ心地悪いよシンタローくん」


「うっせぇ
男を抱きしめる趣味なんてねぇんだよ」


「僕、男なんだけど〜」


「そーだなー
・・・で、なんで落ち込んでんだよ?」


「うわーシンタローくんって直球!」


「で、どうなんだ?」


「別に〜・・・ただ、自己嫌悪しただけ」


「お前、本当に不器用だな」


「そんなことないよ?
器用だなってよく言われる」


「そっちじゃねぇ
優しくされたり、するのに不器用なんだよ」


「・・・なにシンタローくん、僕のこと観察してる〜?
もしかして僕のこと好きなの?」


「好きで悪いかよ」


「え」


「へ?」


「「・・・」」






カノの珍しい驚いた表情と目が合う


・・・が、その表情が赤く染まっていくのを見ると

自分の顔も同じようになっていくのが分かる






「そ、そう言う意味じゃねぇぞ!!!
てか、なんで顔赤くしてんだよバカノ!」


「そ、そう言うシンタローくんだって真っ赤じゃない!」


「こ、これはっ
お前の体温が温かいからだ!こども体温だな」


「人のせいにしないでよシンタローくん!
・・・僕がこども体温なら、シンタローくんは大人体温だね」


「ま、まあな
てか・・・どこ触ってんだカノ?」


「どこって、シンタローくんの体温が本当に大人体温なのか確かめようと思って」


「え、ちょっ」


「バカにするシンタローくんが悪いんだからね!」


「おま、ムキになってやんなって!!」





どうやらこども体温と言ったのが悪かったのだろう

抱きしめていた俺を逆に押し倒し、黒い笑顔で迫って来るカノに引きつった笑顔しか出て来ない





「っ!?」





ーーガチャッ






「・・・お兄ちゃんに、カノさん?」


「あ、モモ」


「如月ちゃん?」


「・・・お、」


「「ん?」」


「お邪魔しましたぁああぁあっ!!!」


「ちょ、待てモモ!!!
誤解だぁああぁああっ!!!」







入って来たモモは頬をかくと直ぐ様出て行ってしまった


非常に不味い勘違いをしているようで



この後、カノと一緒にモモに説明しに行き

途中から入って来たマリーのせいで事が大きくなったのは予想外だった・・・







ー不器用で優しい君ー






(不器用なのはお互い様)


(勘違いされるのも)


(お互い様?)






 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ