カゲプロ

□18歳、腐った少年
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数年前、あれは戻れない夏のこと。

炎天直下 坂道の上・・・ユラユラ揺れる滲んだ僕たち。





「構わないでよ、何処かへ行ってくれ」






彼女の手をはらった。






「行かないよ」







そう言って彼女はもう一度僕の手を掴んだが

そのまま振り払った。



理由?ああ、理由はたくさんあるっ







「五月蝿いな」



「何度だって諦めないよ」



「諦めろよ!!!」



「シンタローくん・・・」







そのまま振り返らずに道を進んでいくが、彼女は諦めずにこちらに来た。







「どうしてもダメなの?」



「当たり前だ
つぅか、なんでGOサイン出すと思ってんだ」



「だって・・・」



「・・・」



「だって、シンタローくんと九ノ瀬先輩の掛け算は美味しいと思うんだもん!!!」



「やっぱ僕に構うな!!!」







そう、理由はこれだ。


僕にしつこく構ってくるのは同じクラスで楯山文乃。

本人が望んだからアヤノと呼んでいる。




こいつは世に言う、腐ってしまった女子。腐女子と言う存在だ。


そのせいで今、僕が行こうと考えている高校の在校生である九ノ瀬遥さんと仲良くなったからと言う理由で

男同士のアレやらコレやら、こどもに見せられないような内容の小説にフィクションで書いている。



なぜか俺が主人公で女役。



認めない!と言えば、認めてくれ!とこう口論している訳だ。







「いいでしょシンタローくん!
お願い、宿題の写しを今度から自分で頑張って来て見せてもらうようにするから!!!」



「最初から自分でやれ!」



「は!もしかしてシンタローくん、彼氏が居るの・・・?」



「なんで彼女じゃなくて彼氏なんだよ!?」



「だって、シンタローくんは受け受けオーラが出てるもん・・・受け受けオーラが!」



「二度も言わなくていい!」







何度こんな会話をしただろうか・・・



隣同士の席になり、たまたま授業中にアヤノがなにかをノートに描いていたのが見え固まった。

それがきっかけなのだが




ご察しの通り、アヤノが描いていたのは男同士の抱き合うシーン。


アヤノは僕の視線に気付き、可愛く誤摩化したが・・・




一つ、誤摩化しきれないことがあった。


それは男同士の抱き合った絵の片方が、どう見ても僕だった。

言い逃れができないのは、台詞の場所に僕の名前が書いてあったからだ。




思い出しただけでもどう表現していいのか分からない。







「仕方、ないね・・・」



「ああ、諦めて帰ってくr「シンタローくんもこっち側に来れば万事解決だよ!!!」なんでそうなるんだ?!」



「だってね、シンタローくんはまだこの世界を知らない
知ったらきっと仲間になってくれる!
そうと決まればコレ、私のお気に入り!読んで感想聞かせてね!!!」



「あ、ちょっ・・・おい!?」







渡されたカバー付きの小説。


なにか嫌な予感はしたものの、このまま諦めてもらう為に読むことにした。





それが僕の人生を大きく変えるきっかけになり


数年後、自分が隠れだがアヤノ化してしまうとは




想像もしていなかった・・・








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