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□理由なんていらない
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 「りゅーうせんぱーい!」


  俺の名前を呼びながら駆けてくる女、結城 栞

  こいつはその、一応俺の彼女…だったりする


  「何だ?」

  「勉強教えてください!」


  こんな風に分からないところがある度に俺に聞きに来る

  簡単に答えを教えていてはこいつの為にならないというのは分かっている

  そろそろ調べ癖をつけさせるべきかもしれない


  「またか、今日は何を教えてほしいんだ?」


  だが俺も惚れた弱みか、つい教えてしまう

  しかし今日こそこいつに言ってやる


  「えーと、ここ教えてほしいんですけど」

  「これ、こないだも教えただろ」

  「そうなんですけど、忘れちゃったんで…」

  「お前覚える気あるのか…?」

  「勿論ありますよ!!テストだってありますし」

  「だったら一度自分で調べてみろ、これくらい教科書に載ってるはずだ」

  「龍先輩、今日はなんか意地悪ですね…」



  そんな辛そうな顔されると思わず教えてしまいそうになるだろ

  しかし心を鬼にして俺は今日こそ言うと決意したことを言ってやる



  「お前の為に言ってるんだ、俺がいなきゃ出来ないなんて困るだろ?それに少しは努力しろ」

  「うぅ…それはそうですけど!」

  「だったら頑張ってやってこい」

  「じゃあ、一人でこの課題ちゃんとやったら何かご褒美くれますか?」

  「ご褒美か…考えとく」

  「すぐ終わらせますからちゃんと考えておいてくださいね!」


  そう言い残し結城は来たときと同じように走って行った

  全く、落ち着きのないやつだ…

  そして俺は妙な違和感に気付く、すぐ…終わらせる…?

  どういうことだ、結城は分からなくて聞きに来たんだよな

  なのに早く終わらせるって…

  まぁいい、今度本人に聞いてみるか




  「先輩!課題終わらせてきました!!」


  次の日またあいつが俺のもとに駆け寄ってきた


  「早いな、見せてみろ」

  「どうですか…?」

  「全部合ってる、やれば出来るじゃないか」

  「よかったぁ!さあ、先輩ご褒美下さいっ!」

  「その前に一つ聞きたい」

  「ん?何ですか?」

  「お前ほんとは勉強できるだろ?」

  「な、何言ってるんですか。勉強出来たら聞きに来る必要ないじゃないですか」

  「じゃあ、何で全部一人で出来たんだ?」

  「それは…」

  「言わなきゃご褒美は無しだ」

  「言います!!言いますからちゃんとご褒美下さい!!」

  「その…えっと…私…先輩と学年も部活も違うし…

  勉強教えて貰いに来るくらいしか会いに来る理由が無いから…」

  「お前馬鹿だな」

  「ば、馬鹿ってそこまで言わなくたっていいじゃないですか!!」


  俺は走り出そうとする結城の手を素早く掴む


  「待てよ、別にお前のこと馬鹿にしてるわけじゃない」

  「え?」

  「別に会いに来る理由なんて無くたっていいだろ?俺達…恋人なんだから」

  「…っ先輩!大好きです!」

  「あぁ、俺も」


  抱きつこうとする結城を宥めながら彼女に聞こえないように呟く

  いつかちゃんと伝えようと思いながら



  理由なんていらない



  だって俺もお前に会いたいから

  「ところで先輩ご褒美は?」
  「今度ケーキ屋連れてってやる」


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