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□バレバレな彼と彼女
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あれから一人卵爆弾の後始末をして朝やるべき仕事をやっていたらいつの間にか一時間目の授業が終わっている時刻になっていた。
無駄に広いこの学校は寮から教室に移動するのにも時間がかかってしまうため涙目になりながらも全力疾走したけど結局二時間目にも遅れてしまった。必死の形相で教室に飛び込んだ私にドン引きした先生に怒られずに済んだのがせめてもの救いだった。
「お疲れ」
休み時間に入り若干魂が抜けかけた状態でいると呆れ顔した有希ちゃんがいつのまにか傍に立っていた。
「あいつらまた何かやらかしたのね。で、今日は何があったの?」
有希ちゃんはよく日々の出来事を聞いてくれる。寮のこととか、寮生たちのファンの人達のこととか…まあ、いろんな話。
「卵がね、爆発したんだよ。…パァーンって」
「何それ」
今日も私が遠い目をして話す今朝の出来事を可笑しそうに聞いてくれた。
そしてひとしきり笑った後きまってこう言う。
「多美!西園寺先生の指令だかなんだか知らないけど、嫌になったらいつでもうちの第3寮にきていいんだからね!」
転入の条件だから有希ちゃんたちの寮に移ることはできないんだけどそれでも有希ちゃんの心遣いはすごく嬉しい。強くて優しい有希ちゃんが私は大好きだ。
「ありがとう有希ちゃん!」
「あはは、よしよし」
抱きつくと有希ちゃんが頭を撫でる
「…よく飽きないねそのやりとり」
一連のやりとりを見ていたのか隣の席に座る日生くんがパックに入ったジュースを飲みながら呟いた
「あら、ヤキモチ?」
「ゴフッ…!!」
有希ちゃんの言葉に日生くんが噎せる。
「図星?」
「ゲホ…ゴホ…っち、ちがうから!」
「そんな赤い顔して言っても説得力ないわよ」
ぐ、と言葉を詰まらせる日生くんを見ると口に手をあてて確かに頬がうっすら赤いみたいだった。こうしてじっくり見ると日生くんはカザくんとはまた違った可愛さがあると思う。なんて口に出して言えない。前にそう言ったら怒られたんだよなーなんて考えてたら目が合った。合った瞬間思いっきりそらされたけど。
「そういえば今日定期演奏会でしょ?」
有希ちゃんたちオーケストラ部通称オケ部は定期的に演奏会を開いている。演奏場所がホールというからなかなか本格的だ。
「うん。よかったら多美も観にきてよ」
「もちろん行くよ!」
「……じゃあ俺も行く」
「じゃあみんなで行こう!…あ、そういえば水野くんも行くって」
「ちょっと待って。なんでそこで水野がでてくるの?」
よかったねと言う前に有希ちゃんが手のひらを見せる。
「え、だって有希ちゃん水野くんのこと「わ―――っ!!」」
「……違うの?」
「ち、違うわよ…!誰があんなヘタレ目っ!」
「とか言いつつ顔が赤いよ?」
さっきの仕返しとばかりにすかさず日生くんが言うとバッと頬をおさえる有希ちゃん益々顔が赤く染まっていく。
「私ちょっと急用思い出したから!!」
よっぽど恥ずかしかったのか言い終わる前に教室から走り去っていった。
「有希ちゃんって…」
「「バレバレだよね」」
思わず日生くんと顔を見合わせるて苦笑した。