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□素直の行方
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ときどきあの子は素直じゃない。


「ノリックさん」「なんや〜ぽちくん?」「あの、もう、大丈夫、なので」「そうなん?」

ぎゅうっとぽちくんの髪の毛をつかんでいた僕の指をほどいて、背中にあった左手を上にあげた。僕の抱擁から解放されたぽちくんは、むずがゆそうに身をよじって僕から距離をとる。

「あの」「うん?」「すみませんでした」「ううん、ええんよ」「でも、あの、なんか、その…」「うん?」「……も、申し訳ない、から」「そんなことないて。ぽちくんは大切な子やし」「でも、その…シゲさんに見られるかもしれないし」「ぽちくんは藤村が好きなん?」「いえ、そんなことは」「ほな、何の問題もないやんな」

耐えきれなくなってふたたび彼を抱き締める。シャンプーの良い匂いがする頭を、すんすんかいで、僕の胸に抱きおさめた。

「僕な、ぽちくんを抱き締めてると落ち着くんや。ぽちくんもそうやろ?」「う…………はい」くぐもった声が胸に伝わって、僕はくすくすと笑った。

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