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□探求心
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「日記帳?」
「そうやで」

ふふんと鼻を鳴らして吉田は頷いた。部屋内に入ると、既に九州選抜の功刀・高山、関西選抜の吉田・藤村、東海選抜の山口・横山、関東選抜の須釜、計7人が集まっていて円になって話し合っていた。首を傾げる日生に須釜が口を開く。

「ほら、スタート地点は皆平等なはずなのに極端に出番の回数に差があるじゃないですか」
「総受けサイトやっちゅうて期待して来てくれはった方々に申し訳ないやんか。せやから、みんなで研究すれば今後何とかなるかもしれんゆうてな」
「で、日生んとこの板井に研究資料用に適当に見繕ってもらったらしいよ。この人達」

と、横山が言って山口が「まぁ、やらないよりはマシっしょ」とさわやかに笑った。


「でも須釜とか研究しても見込みなさそうやんなぁ」
「もしかして今さりげなく喧嘩売りました〜?」
「おまえらトレセン中に暴力沙汰起こしてくれるなよ」

たのしそうな目上選手に交じって、既に登場経験者の日生も中心のノートをのぞき込んだ。


*にねんいちくみ ふじしろ せいじ*

「これは藤代くんの日記のようですねぇ」
「どうせイタズラばかりの毎日だったんだろうな」
「ありうる」

○月○日
きょうから筋トレをすることにした。がんばってライダーになるぞ。

「きったねー字だな」
「なかなか読解に骨が折れそうですね〜」
「いや…そうでもなさそうですよ」

○月×日
きょうも筋トレした

○月△日
きょう筋トレ

「藤代…あいつ記録向いてないな」
「5W1Hって知ってるんですかね〜、彼」

○月□日
おわり


「何が?!」
「まだ3日しかやってないじゃん!」
「ほんまもんの三日坊主や」
「ある意味期待を裏切らないやっちゃなぁ」




武蔵森レギュラー陣にいわせれば、三日も続いたことがむしろすごい。

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「そういえば高山?珍しく大人しいけどどうした?」
「ふっふっふ!研究資料なんぞ人気者の俺が自ら用意しちゅう。見よ!これが高山昭栄の人気の秘密――」
「やかましいわ、ドアホ!」
功刀の一撃が高山に当たる。
「功刀!?」
「九州選抜は相変わらず豪快ですね〜」
「あれ大丈夫なんですか?倒れたっきりピクリとも動かないんですけど」
「勝手に復活するけん、ほっといても大丈夫じゃ」

*二年三組 椎名つばさ*
「椎名のだ」
「なんや地味に高そうなノートやな」

〇月×日
今日は母がとつぜんジェラートを食べたいというのでイタリアにいくことにした。母はローマの休日のしゅじんこうにひどくあこがれていて……(以下略)

「喝!」
功刀が机を拳で叩く。

「え何々?皆どないしたん?」
「こぎゃん東京のボンボンは行け好かん」
「癪に障る」
「俺もちょっと同感」
「庶民の敵ですね〜」
「でも須釜さんが一番庶民の敵っぽ…ムグっ」
「はいはいはい、みっくんやめとき〜ヤケドすんで〜」



須釜さんは意外と庶民派。
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*三年四組 横山平馬*

「小3とは思えないほど綺麗な字だな」
「ていうかこれ平馬くんのやん」
「ああ、そうみたいですね」

〇月△日
今日は芥川龍之介著の「羅生門」を読み終えた。短い話ではあるが言葉では伝わらない残酷さや人間の脆さが伝わってくる。これだけ深い作品を書ける人間を自殺という形で失ってしまった事実は我が国にとっても大変な損害であったように思う。

「お…おい平馬これ昨日の日記じゃないのか」
「違いますよ」
「日記っていうより読書感想文みたいになってますね…」

〇月×日
メンデルの「植物雑種に関する研究」より僕はその法則にしたがって幾つかの実験を試みた。下記はそれの一例である。…(以下略)

「意味がわからん」
「何考えとんねんこの小学生」
「もうやだ、何この子怖い!」
「地味に女口調になるのやめてくれませんか圭介先輩」




幼少期から何考えてるかわからない横山くんとお母さん心理にかかっちゃったケースケ先輩。

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*3年1組 山口けい介*
(以下略)

「ちょっとおおお!何文章丸々略してくれちゃってんの!」
「やーだって、横山の後じゃ普通すぎておもろないもん」
「お母さんの手伝い頑張ったご褒美にガチャポンやらせてもらったって言われても…ねぇ」
「ガチャポンの何が悪いんだよ!いいじゃん普通だって」

「なんかすみませんでしたね圭介先輩。」
「いつも無表情の横山が微笑んでんだけど!これ以上ないってくらい歪んだ微笑みを浮かべてんだけど!!こんなに人を見下した微笑みはじめて見たわ」


「はいはい、じゃー次の日記は…っと」
「次は誰の日記やろ〜」
「さ〜皆目検討もつかんわ〜」

「お前ら人の話聞けよ!」




ケースケくんは普通にいい子。

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*三年二組 功刀一*

「あ、これカズさんのやなかとですか!」
「おーホントだ。(ホントに自力で復活した…!)」

○月×日
きょうは、友ダチのじょうこうくんと遊びにいった。公えんでサッカー、たのしかった。

「功刀先輩、意外に普通の小学生だったんですね」
「そうですねぇ、本当意外に」

○月△日
じょうこうくんが他の小学校のやつとけんかしたらしい。あたまぬうとか言ってた。心配だ。

「大事件やん!」
「じ、じょうこうくん、何があったんだ」

〇月×日
どうやらじょうこうくんとケンカしたのはこのあいだの公園でよく遊んでいるほかの小学校のやつららしい。ゆるせん。

「シマ争いやな」
「小学生でなに柄悪い争いしてるんですか」

〇月▽日
じょうこうくんのけがはおもったよりひどく、しばらく遊べないといわれた。せめてケンカしたやつらにあやまってほしい。

〇月*日
くわしくきけば、じょうこうくんは5たい1で一方的にやられたらしい。そんなのケンカじゃなかろうが。友ダチがそんな目にあってほおっておけん。

△月〇日
おれはどうなってもかまわん。ただダチがいやな思いをするのはゆるせねえ。あしたひとりでやつらの学校にのりこむことにした。

△月△日
どうなったか覚えていない。ただ母さんがしきりにあやまっていた。おれがなぐったあいつらも必死にあやまっていた。

△月×日
じょうこうがみまいに来た。あいつ泣いてた。おれのせいでごめんって何度もあたまを下げるから、おれが好きでやったことだって言ったらよけいに泣いた。

「おい、いつまで読んで……って何お前ら泣いちゅうか!」
「功刀の男気に…」
「じょうこうくんとの友情に…」
「功刀は昔から不器用な男なんだなあと思って…」
「カズさんも、よっさんもバリええ男たい…っ!」
「なんじゃこれ、なんか恥ずい!馬鹿にされるより恥ずい!お前らいい加減にせぇよ」



「じょうこうくんに会いたい…!」
「せからしか!、お前らほんにせからしか!!」

翌日、各選抜の強豪達から生暖かい眼差しをむけられる九州選抜のキャプテンがいたとかいないとか

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