CP

□愛しのワンコ
1ページ/1ページ

「翼さん、おかえりなさい!」

今日は用事があり将より帰りが遅くなってしまった。
ただいまと言いながら靴を脱ぐと、嬉しそうな声で己の名前を呼ぶ将が廊下の向こうから姿を見せた。
喜びをいっぱいに表す将はまるでワンワンとご主人様の帰りに尻尾を振るわんこみたいだ。
リビングに入り改めてただいまと告げると将が幸せそうに笑う。

「もうすぐご飯が出来ますから」

座って待っててくださいとパタパタとスリッパを鳴らして廊下を歩く。
席に着くと温かい湯気が出たワインが出て来る。

「外は寒かったでしょう?」

ホットワインですと将は微笑んでキッチンに戻った。
机の上にはスライスされたチーズとクラッカーが置いてあって目を瞬かせる。
普段は一緒に帰宅して一緒にキッチンに立つからこんなことはほとんどない。
自分のためを思ってこんなにもしてくれる将がとても愛しい。
両手に料理を持って運んでくる将を呼び止める。

「将、おいで」
「はい、なん、・・・つ、翼さん!?」

料理を持つ手に自分の手の平を軽く重ねて優しく将の頬に口付ける。
恋人同士だというのにこれだけで顔を真っ赤にしてパニックになる将にクスクスと笑ってしまう。
いいことをしたら褒めてあげるのは大事なことだ。
なんとか料理を机に置いた将にニッコリと微笑む。

「将、ありがと」
「翼さんが喜んでくれるならやり甲斐あります」

照れて頬をかきながらへにゃりと笑った将にパタパタと揺れる尻尾が見えた。

夕食の片付けはやると申し出たが将は受け入れなかった。
疲れているだろうと一人でやろうとしたので、結局いつも通り二人で分担して片付ける。
予想より早く終わり、二人で並んでソファーに座った。
バラエティー番組を見て二人で笑う。
何気ないことだけどこんな日常を幸せだと呼ぶんだろうなとぼんやりと思う。
少し触れる程度だった指先を絡めると将がこちらを向いた。

「将、…シよ?」

途端顔を真っ赤に染めた将だったが遠慮がちに口を開いた。

「翼さん、その、・・・明日も仕事があるじゃないですか」

その間も指をもぞもぞと動かして誘ってみるが将は頷かない。

「大丈夫、ちゃんと手加減するからさ」
「でも・・・やっぱりダメです」

絡めた手をやんわりと離されたかと思えば、何故か将はあからさまにしゅんとする。ぺたんと垂れた耳が見えた気がした。

「将」
「はい」
「こっち向け」

将をこちらに向かせて、軽く肩に手を置いてちゅっと触れるだけのキスをする。

「今日は我慢するけど次の休みは覚悟しとけよ」

そう言うと将の表情が一変して明るくなる。

「楽しみですね、次の休み」
「・・・おバカ」

言葉ではついそう言ってしまったが、頬を緩ませ締まりのない顔をしている自分に気がつき、俺もバカだなと呟いて将を抱き寄せた。


.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ