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□結局似た者同士ということで
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「ねぇ、中西」
「んー?」
「お前ってさ、ホモなんだよね」
突然の根岸のトンデモ発言に、ベッドに寝転びながら携帯を弄っていた中西は、したたか頭をぶつけた。
「…根岸く〜ん?」
「え、違うの?」
地を這う声で顔をあげる中西に、根岸はきょとん顔だ。悪いやつではないんだけど、時々アホみたいにデリカシーがない時がある。まあそういう抜けたトコが、魅力ったらそうなのかもしれねーけど…。
「悪かったなあ、同部屋がホモで。変態で。つーか俺はバイだっつってんだろ。文句あんのか、ああん?」
「いや、俺別にそこまでは…まあ確かに中西は変態だとは思うけ…あ痛ェっ!」
ムカついたので、めでたい頭めがけてそのへんにあったものを投げつけてやった。
「げ、中西、これ俺のUSB!中身パーになったら…!」
「平気だろ、大したもん入ってねーんだし。つーかさ、お前だけには言われたくねえんだけど」
「は?なんで?」
「なんでってお前、風祭のこと好きなんだろ」
何でもないように中西がさらりと吐いた言葉に、根岸の弓なりの眉が、きゅっとひそめられる。
「誰が?」
「おまえ」
「……誰を?」
「か、ざ、ま、つ、り」
しばらく室内の時間が止まった…ように中西は感じた。面白かったのでぽかんとした根岸の顔を観察していたら、数秒後、ぼんっと音でも立てそうな勢いで真っ赤に染まっていった。ああやっぱりおもしれー。
「ば、な、何言って…え、ええええ!?な、中西、何で!?」
「いや…あれで気付かない方がどうかしてると思うけど」
主人に懐く忠犬もかくや。毎日風祭の後を追っては、風祭が笑えば顔を緩ませ、落ち込めば慰めようと必死になり、すこしの触れ合いでも真っ赤になって慌てふためく。はたから見てても、意識しまくりなのがわかり易すぎる。というかコイツ、あれで周周りに知られてない気だったのかよ。
「やっぱそうか…俺、風祭を…」
根岸はまだ赤らんだ顔のままで、がっくりと肩をおとした。
「なに、もしかして自覚すらなかったワケ?」
「いや、最近は自分でも薄々は…。けど、だって、風祭は男だぜ…?」
うーん。ま、確かにフツーは悩むとこだよな。
「なるほど、それで俺に相談しようとおもった訳ね。どうせ、どうしようもねー変態ホモだし?」
「わ、悪かったってば。他に話せる相手、いないんだもん…」
しゅんとする様子はさながら、耳を伏せる大型犬みたいで愛らしい。まあ何にせよ、こうして頼りにされるのに悪い気はしないか。
ベッドから立ち上がり、落ち込む根岸の肩にぽんっと優しく手を置いてやる。
「仕方ねえじゃん、好きになっちまったもんは。男でも女でも関係ねーよ」
「…そうだな。けど、俺はよくても、風祭が…。気持ち悪いとか思われたら、生きてけないかも俺…」
「ああ、それなら」
大丈夫。だってお前ら両思いだろ。
そこまで言いかけて、ふと口をつぐむ。多分、いや間違いなくこの男は、風祭が自分を意識しつつあるなんて気付いてない。ある意味根岸の努力は報われた、ってワケだ。それだって、あんなに見ててわかりやすいのに。
…それなら、しばらくほっといた方が面白いんじゃないか?
中西の中の悪戯好きの虫が、うずうず疼き始めた。
「?それなら?」
「あ、ああ、まー頑張れよ。こんだけ一緒にいるんだから、これからチャンスもいっぱいあるだろ。俺、応援してるからさ」
「中西…やっぱお前スゲーいい奴…」
きらきらと素直に目を輝かせる根岸に、中西は満足げに頷いた。
「よしよし、今頃わかったのか?」
「遊び人だけど」
「うるさいほっとけ」
この時中西は、まだ知らなかったのだ。
風祭が、あの根岸以上に、超ド級の鈍感だってことに。
−後日。
「あの、中西先輩」
「ん、風祭?なに、俺に用なんて珍しいな」
「ちょっと相談っていうか、あの…先輩って…ホモ、なんですか?」
「……」
(なんかものすごいデジャヴュなんですけど!?)
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