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□無自覚保護者
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素晴らしいくらいにギラギラと光っている太陽。
賑わっている街。

「ごめんね、なるべくすぐ買って戻ってくるから」
「待て俺達もつい行く」
「ううん、僕一人で大丈夫だから!」
「そういう訳にもいかな…「はいはーい!じゃここで待ってる」


監督の使いで俺と風祭と若菜は街に買い物に出ていた。
俺も色々と買うものがあったのでちょうど良かったのだが…。

「ダメじゃん水野」

風祭を見送った後、若菜にそう言われて俺は腹が立った。
何故若菜に一緒に買い物することを止められたのか分からなかったからだ。
あいつは遠慮して言わないが、荷物持ちがいた方が何かと良いに決まってる。
それを止められ俺は苛立っていた。
若菜ははぁとため息をつくとわざとらしく片手で頭を押さえた。

「だから椎名とかに過保護って言われんだよ」
「な……!」

何故お前がそれを知っている。というか俺は別に過保護じゃない。断じて違う。

「言っとくけど、同じ学校なんて関係ねぇかんな。」
「は?」
「保護者面してられんのも今のうちっつーこと!覚悟しとけー。」

なんか無性にぶん殴りたくなったが我慢した。
すると店からタイミングよく風祭が出てきた。
頼まれたものはすべて揃えたし、各々買いたいものも買ったし、後は帰るだけだったのだがー…。

「あっ!"Mr.dressing”の新しいシングル出てる!」
「何っ!?」

風祭がCDショップの前で声を上げた。
若菜もすかさず反応し二人でCDショップのショウウィンドウを見ている。
俺はさっぱり意味が分からず二人の背中を見ていた。

「風祭も好きなのか、"Mr.dressing”!」
「うん!歌詞が好きなんだ。前向きになれるから」
「だよな!お前とは色々趣味が合いそうだ。今度語ろうぜ!」
「へへ、楽しみだな」

勝手に盛り上がる二人をそのままにするわけにもいかず、俺は無理矢理話を中断させて帰路につかせた。
正直、盛り上がる二人を見ていていい気はしなかった。
楽しそうに風祭としゃべっている若菜を見て苛ついた。
何故かは分からない。
胸のあたりがもやもやして、いてもたってもいられない気持ちになる。
最近よくこんな気持ちになるので体がおかしくなっているんじゃないかと思う。
学校に着いてからもその気持ちが現れた。
今度は藤代も交えて三人で先程のCDの話をしているのだ。
自然に眉間にしわが寄った。
そんな俺を見かねてか杉原が声をかけてきた。

「…すごい顔してますよ」
「………………」
「もしかして、嫉妬?」
「っな…!」

くすくす笑う杉原にどういうことだと言い詰める。
杉原はきょとんとした顔をした。

「え、まさか自覚ないんですか…?」
「自覚も何も俺は嫉妬なんか…!」

そこで気付いた。
俺は自然に風祭を目で追っていて、俺以外の男と話している姿を見るとモヤモヤした気持ちになっていたことを。
自分が随分前から風祭にどうしようもなく惹かれていたことを。

「っつ…!」

口元を手で押さえて、俺は真っ赤になった。
杉原がまたくすくす笑っている。

「笑うな…!」
「すみません。あまりにもおかしかったもので」

すると急に笑うのを止めて、笑顔で言った。


「嫉妬は醜いですよ。」
「……っ」
「早く告白した方がいいんじゃないですか。そして…」



(”さっさとフラれちゃえば楽になりますよ”って
余計なお世話だ!)

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