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□たいがい鈍感
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どうしても幸せになりたいと言う奴はばかだと思う。幸せだのなんだの、そんなあやふやなものは欲しいと言って簡単に手に入るものではないのだ。
「いや幸せは欲しいだろ」
「…結人、俺の話聞いてなかっただろ?」
「んー、ま、正しいんじゃないそれも」
「じゃあ」
「でも俺は、幸せをあげることができたらいいのにって思うけどな」
「………ハァ?」
「俺が手に入れた幸せを全部あげれたらいいのに」
「……あっそ」
結人に理解を求めるのは諦めて、パック入りのリンゴジュースを啜る。
「結人のその考え方はわからない」
「えっ?」
「なんだよ」
「一馬はないの?幸せ全部あげたいって」
「幸せを物質的に受け渡したいなんて考えたこともない」
「えー」
「なんだよその顔」
「嘘は良くないよ一馬」
「…そういう英士はどうなんだよ」
さっきから予習だか復習だかに励んでいた英士もいつの間にか勉強道具を片付け、顔を上げていた。
「俺も結人と同じだよ。できることなら自分の幸せを全部あげたい。その人の幸せが自分の幸せってよく言うでしょ」
「わかるような、わからないような…」
「だからさ、俺らはサッカーが好きで今大っ好きな親友と一緒に同じ夢に向けて努力して、辛いことも嬉しいことも共有できて…それってサイッコーに幸せじゃんね。」
「結人…言いながら照れないでよ。こっちまで恥ずかしくなってくる」
「ちょ、英士こっから大事なとこだから!あー…ごほん、それがさ特定の誰か…まぁぶっちゃけ好きな奴がいたとするじゃん。やっぱその人の存在だけで幸せ感じるんだけど、それってなんか一方的にもらってるって感じだろ。だから同じように相手にも幸せをあげたいって思うわけですよ一馬クン」
そう言いながら途中で感極まった結人が肩を組んでくる。…もしやポカリで酔ったのだろうか
「ああ、本当になんでこの鈍感野郎に風祭が…!」
「なんでこのタイミングで風祭が出て来るんだよ」
「ああもうもどかしい…どうにかして英士!」
「一馬の鈍さがそもそもの原因だからね」
「は?」
もう言っていることが全くわからなかった。英士に助けを乞おうとするも残念な目で見られるし。え、なに?悪いのおれ?
「あ、真田くん!」
「なんだよ」
「あれ、みんなもいたんだね。気付かなかった」
きょとんとした目で二人を見回した風祭に、英士がはぁと溜め息をついた。