CP

□いつもの如く
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どれがきっかけだったのか、俺には分からない。
自分の手の中の小さな手を握ったまま、それをぐいって引いて、その小さな身体を自分に倒れ込ませる。
ほのかに香るのは、石鹸のような、花のような、甘くやわらかな匂い。
腕の中の小さな身体から微かに感じられるそれに、ずくん、とあらぬところがうずく。

「もう、水野くん」
くすくすと笑って、風祭は俺を見上げる。
俺を、受け入れてくれる友達。ずっと、ずっと、一番大事な友達だった。
風祭に感じる胸が痛くなるようなうれしさや、その声を聞くと感じるよろこびや、人柄に深く惹きつけられてもっと知りたいと思っていた。
その大きな、黒い瞳。俺を映して、ゆっくりと瞬くその瞳に吸い込まれるように近づくと、風祭はふわっと笑った。
「分かってるよ、……素直になれないだけだよね?……ちゃんと思っていることを伝えればきっと…」
「……か、風祭?」
風祭はとても優しく微笑んでいて、俺はたまらなくなって力任せに抱きしめた。うれしくて、うれしくて、俺はその柔らかい髪に鼻をうずめて、ほのかな香りをいっぱいに吸い込む。風祭が俺の腕の中にいて、俺の想いを理解してくれているってだけで、世界中にこのしあわせを知らせたいほどだった。


「大丈夫……ほんのちょっと、勇気を出せばいいだけだよ。」



…もう俺は我慢できずにその身体を畳に押し倒した―――




……―ところで目が覚めた。

また夢オチかよっ!!

叫ばずにはいられなかった。朝練にちらほら集まりだしていた下級生達が『一体何ぃっ?』と青ざめた顔して振り返ったが構っていられない。

本当もうふざけるなよ、一体何度やれば気がすむんだ。あれだけ期待させて落として何が楽しい?あとちょっとだったじゃん!夢オチなら夢オチでキスくらいさせろや!
勢い余って近くのベンチを蹴ったら足の小指を角にぶつけた。痛い、地味に痛い。






「ちょっと…何なのあれ?朝からうっとおしいったらないわよ」

「ん〜?どーせまたポチとのハレンチな展開に期待して身体の至るところを硬くさせてたらそれが夢オチだったんやろ」

「…いつものことじゃない。そんなのあいつならもう慣れたもんでしょ。ていうかさらっと下ネタ噛まさないで。」

「わかっとらんなぁ〜姐さんも。あのタツボンやで?ただでさえ素面でもなんやネチッこいタツボンやで?そら何度も何度も夢で済まされたら溜まるわ(あらゆるものが)」

「(こいつ…)でも私達一応中学生よ?18禁なんてご法度じゃない。」

「せやな。まぁあのボンボンのことや、ポチと二人っきりになったりあわよくば手つなぐとか少しでも進展があればそれはそれで満足なんとちゃう?」

「はぁ〜……ったく仕方がないわね。私達が一肌脱ぐしかないようね…シゲ!あんたも協力しなさいよ」

「はいはい、仰せの通り。ホンマ世話の焼けるやっちゃなあ、あのボンボンは」







つづく(……かもしれない)

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