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□がんばれ水野くん
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戦いの火蓋は、今、切って落とされる!

ミーティングが終わり、帰ろうとしている風祭に声をかける。
それだけで少し、心臓がどきどきしてしまったなんて、秘密だ。

「今日メシ食って帰らないか?」

断られたら、どうしよう!
へたれな性格が顔をのぞかせる。
そんな考えが、顔に出てしまっていたのだろうか。
風祭は笑いながら了承の返事をくれた。

二人で近場のファミレスに入って、どれくらいの時間が経っただろう。
くだらない話で盛り上がりながらも、水野は緊張していた。
今日こそ、へたれな俺と決別するんだ!
あの日、心に誓った決意を思い出し、アイスティーを一気に飲み干した。

「水野くん・・・大丈夫?」
風祭の心配そうな一言でハッとする。
緊張からか、いつもよりも随分多く飲んでいたらしい。
風祭はさっと会計を済ませ、俺を支えながら店を出る。
たぷたぷと腹のなかで飲んだアイスティーが揺れているのがわかるくらい飲み過ぎた。ぶっちゃけ風祭の支えなしでは歩けない。
こんなはずじゃなかったのに、と自分を恨まずにはいられない。

「俺ってやっぱりへたれなのかな・・・」

風祭に想いを伝えるために誘ったのに、緊張して飲み過ぎてしまうなんて。
突然何言ってるの、水野くんと風祭は笑うが、俺の表情は曇ったままだ。
そうやって二人で歩いてるいるうちに、自宅の前に着いてしまった。

「お大事に」

風祭はそう言うと、俺の肩にぽんと手を置いて、それじゃあ帰るからと踵を返して歩き出そうとした。

「風祭!」

無意識のうちに風祭の腕に手を伸ばしてた。
不意に手を引かれた風祭は反動でよろよろとよろめいてしまい・・・
気付けば腕の中にすっぽりと収まっていた。

「水野くん・・・」

抱き締められる格好となった風祭は俺を見つめてくる。
息がかかりそうなほど、顔が近い。
名前を呼ばれたことで自分の状況を理解した。
想い焦がれた風祭が、今、自分の腕の中にいる。

これは夢か、幻か?

思考が停止しているところにもう一度名前を呼ばれて現実に戻される。腕の中の風祭を見る。
驚いた表情をしているが、嫌がっているようには見えない。
あの日の決意が思い出される。

「風祭・・・すきだ」

呟くように言うと同時に抱き締める腕に力をこめる。
きっと、今の自分の顔は真っ赤だから。

あぁ、なんて不恰好なんだろう!もっとたくさんの言葉を用意していたのに!

しかし、しばらく経ってもも風祭からの反応はなかった。
心配になって身体を少し離し、恐る恐る顔を覗き込んだ。

「・・・ふふ」

目線が合った瞬間、風祭はクスクスと笑い出す。

「うん、これでやっと両想いだね」

風祭は嬉しそうに笑うと、俺の背中に腕を回した。



後日、

「ということで風祭は俺のだから手を出すなよ!」

そう高らかに宣言すると佐藤は笑った。
きょとんとした顔の水野に、佐藤はまた笑う。
「俺が本気でポチに手ェ出すと思ったん?」

思ったから、決死の思いで告白したんじゃねぇか!
しかし、それがきっかけで結ばれたのだから佐藤には感謝しなくてはならない。

「釈然としねぇけど、サンキュな」

照れくさそうに礼を言うと、佐藤は不敵な笑みを浮かべた。
「まぁこれからは、分からへんけどな」

それだけ告げると佐藤は部屋を出て行ってしまった。
せっかく風祭と思いが通じ合えたのに、どういうことだよ!
新たな悩みに頭を抱える水野だった。



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