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□本音
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今日は真田くんと初めて二人で出掛ける日。


「それってつまりデートだろ?…まあ、頑張れ」


今日のことを功兄に話したら、一瞬微妙な顔をされた後こう言われた。今でも真田くんと付き合っているということが夢なんじゃないかと疑うくらいだから、デートという響きはなんだかすごくくすぐったい。

今日のためにいろんな店を巡って店員さんにもいろいろ相談して買い揃えたコーディネート……真田くんはどう思うだろう。

あれこれ考えてそわそわしながら携帯で時間を確認すると、待ち合わせ時間までは余裕の10分前。だったのだが、到着してすぐそこに真田くんの姿を見つけた。


「真田くん!」


彼の名前を呼び小走りで駆け寄る。街中でも目立つ洗練されたオーラに整った顔立ち、それだけでも自分には勿体無いくらい素敵な人なのに性格まで素敵だなんてずるすぎる。見慣れたユニフォーム姿ではなく私服姿の彼はすごく新鮮だ。


「真田くん!」


真田くんの前まで来て声をかけた。


「……真田くん?」


が、返事が無い。まさかとは思うけど気付いてないのかもしれないと思いおーい、と顔の前でひらひらと手を振ってみるけれど全く反応する気配はなくて。

「大丈夫?」


明らかに様子がおかしい。立ったまま死んでるんじゃないかと思い彼の顔を両手で包み込む。すると真田くんは突然コンセントに繋いだようにビクリと体を震わせた。


「あ、ああ」


そして我に帰ったようにそう言った真田くんはやはり誰がどう見ても様子がおかしい。


「もしかして…体調、悪い?」

珍しくぼーっとしている彼を心配しチラリと顔を除き込むと、彼は呆れたような困ったような顔をした。そして真田くんはチラリと僕の方を一瞥しその顔を大きな手で覆った。


「……っ馬鹿」


真田くんはいきなりこっちに来いと言って僕の腕を掴んだ。と同時にすごい力でどこかへ引っ張っていく。僕は何がなんだか分からないままぐんぐん歩いていく真田くんに置いていかれないように小走りでついていく。やがて人通りの少ない住宅街に着くと、真田くんは神妙な面持ちで口を開いた。


「……あまり人の多いところに行くな」

「えっ……」


真っ黒な瞳で真っ直ぐ目を見つめられ困惑する。そこまで見るに耐えない格好をしてきてしまったのかとショックを受けていると真田くんが頭を掻き何か言いたげにそわそわし始めた。奇妙な沈黙が流れる。


「その、ぼーっとしてたのはだな、あれだ」


なんだか知らないけど目元を染めて、珍しくはっきりしない真田くんがすごくしっくりこない。頭にはてなマークを浮かべ続きの言葉を待っていると、突然真田くんがカツカツとこちらに近付いてきて、肩をギュッと抱き締められた。


「さ、さなだく……!?」

「みとれてた、からだ」


真田くんは僕の耳元で、小さな小さな声で呟いた。あまりに突然のことで何を言われたのか理解できずに固まっていると、真田くんは僕の耳の横で今度ははっきりとした声でこう呟いた。


「風祭がかわいくてみとれてた」


その瞬間一気に頬が熱くなるのを感じた。心拍数も一気に上昇してさらに恥ずかしくなる。顔は見えないけれどきっと真田くんも真っ赤になっているだろう。だって、重なる心臓の音がうるさいくらい鳴っているから。








誰よりも美しいお前を
独り占めしたいんだ

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