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□学パロ
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「あ、忘れ物・・・」

帰りにいつものようにファミレスに入ってだらだらとだべっていると真田が声をあげた。
時間はすでに夜の8時を過ぎている。

「また明日でいいじゃん」

どうせ急ぐものでもないんだろ?と若菜は言うけれど。
明後日に提出を控えている課題があるのだ。ある程度はできていたが、できることなら今日中に終わらせてしまいたい。

「やっぱ取ってくるわ」

いってらっしゃいと呆れ顔の若菜と先程から熱心に読んでいた本から視線をこちらに向け気をつけてねとクールな表情を崩さずに言う郭に軽く手を振り店を出た。

誰もいないはずの教室の扉からは、なぜか光が漏れていた。
消し忘れかと思って中に入ると、机に顔を預けて寝息を立てている風祭がいた。
机の上にはプリントが散乱している。
きっと、課題を解いている途中で疲れて眠ってしまったのだろう。
誰もいないのをいいことに、真田はそっと風祭の寝顔を覗き見る。

「・・・」

なかなか見ることが出来ない風祭の寝顔をまじまじと見る。
思わず、髪を撫でたくなって手を伸ばしかけて我に返る。
寝ている相手に、何をしようとしているのか。
触れてしまうと、何かが崩れてしまう気がした。
伸ばしかけた手を、ぎゅっと握る。

「すきだ・・・」

思わず呟いた想いは誰にも届くことなく空気に溶けた。
届かなくても、どうしても、この気持ちを伝えたかった。
しばらくじっと立ったまま風祭を見つめていたがんー、と声を漏らす風祭にはっとする。
こんなところで寝ていては、風邪をひいてしまう。

「おい、起きろ」
「んん・・・」

ぐずる風祭は、いつもよりも子供っぽく見える。
風邪ひくぞと体をゆすってやると、ようたく重いまぶたを開いた。

「・・・真田くん?」
「こんなところで寝てると風邪をひくぞ」

そう言われて、風祭はぐるりと顔を見渡しあっと声をあげる。
いつのまにか寝てしまったことに焦っているのだろう。

「お前、頑張り過ぎなんだよ」
「はは…真田くんはこんな時間にどうしたの」

風祭に言われて真田はここへやってきた意味を思い出す。

「あ、忘れ物を取りに来たんだった」


突然慌てだす真田に風祭はくすくすと笑いだした。
真田も、その笑顔つられて一緒に笑う。

「今日は遅いからもう帰るよ」

風祭はそう言うと帰り支度を済ませた。
真田も取りにきたプリントを手にし、一緒に部屋を出る。

気をつけて帰れよと真田が言うと風祭は片手を上げて笑顔で答えた。
その笑顔に、心がほっ、温かくなる。
今は、この関係が心地良い。
先ほどの告白を心にしまって、真田は歩き出した。

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