CP

□確信犯
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「では各自休憩を取るように」

午前中の練習が終わり、西園寺がそう告げた。
かったるそうにふわーと体を伸ばす者やアチーと手のひらで扇ぎながらため息をもらす者などを横目にもう少しボールを触っていようかと考えていると、ツンツンと腕を突かれた。

「ポチくん、東京ももう休憩入ったんやろ?一緒にお昼ご飯食べよ?」

声の方に視線を移すとコンビニの袋を持ったノリックがニッコリと微笑んでいた。

「今日は天気がいいから屋上で食べたいなあ」

彼の提案に風祭も頷き立ち上がった。
あたりを見回すとみんな雑談に花を咲かせている。
早くとせかされるまま腕を引かれその場を離れた。

一歩、屋上に足を踏み入れると気持ちの良い秋晴れが広がっていて、大きく息を吸い込んだ。

「気持ちいいやろ?」

クスクスと年相応な表情で笑う彼に笑顔で答える。
壁に背を預け、二人並んでコンビニのおにぎりを頬張る。

「こういう日は手作りの弁当が食べたいですね」
「ポチくん、弁当も作れるん?食べたいわ〜ポチくんの手作り弁当」
「…もしよかったら今度作って来ますよ」

あんまり味は期待しないでくださいよ、と風祭が笑う。
のんびり穏やかな午後のひとときだ。
最後の一欠けらを食べ終わった彼に風祭が手を伸ばした。

「ご飯粒がついてますよ」

口元に寄せようとする手を光徳が制する。
その顔はぷくりと頬を膨らませて不満そうだ。

「ポチくんが取って」

だからともう一度伸ばしかけた手を彼が掴む。
意味がわからないと首を傾げた風祭に彼はニコリと笑った。

「ポチくんのその可愛いお口で取って」

いくら恋人だからと言っても白昼堂々と、それもの屋上とはいえ野外で出来る訳がない。
ねぇ早くと彼は自分の唇を指差す。
これは体よくキスをせがまれているようだ。
恥ずかしくなって顔を赤面させてブンブンと首を横に振る。
家で二人っきりのときに勇気を振り絞っても出来るかどうかわからない。
しかし彼は有無を言わさず首に手を回してきた。

覚悟を決めてぎゅっと目をつむったとき、ガチャリと音を立てて屋上のドアが開いた。
驚いてパッと目を開くと、同じく驚いたように目をパチパチと瞬かせるシゲがいた。


「あ、俺邪魔してしもうたん?」

口をパクパクさせて慌てる風祭に代わりノリックが冷静に答えた。

「んもう!いややわホンマ。野暮な質問せんとってや」

全く動じた様子はない。
シゲはそうだよなと呟いて屋上を出て行った。

「さぁ、早く取ってや?」

甘えるように上目遣いで見られて断れるはずもなく。
ゆっくりと目を閉じて彼の唇に自分のものを重ねた。

「ありがとう」

そう言ってクスッと笑った彼の顔がもう一度近付いてきて、敵わないなあと思いながら再び目を閉じたのだった。

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