CP

□くちびる
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※学園パロディです




4限目が終わり、昼休憩の時間。隣のクラスにいる風祭と、一緒に昼飯を食べるため席を立つ。

隣の教室だから、そう時間は掛からない。教室の後ろ側の戸を開けた瞬間、女子たちの声につい後ずさった。

「それ、新色の?」
「今 CMやってるよねー」

「ちょっと 風祭、動かないの!」
「えー・・・」

どうやら集まる女子の中に、あいつもいるらしい。 とりあえず、終わるまで壁に凭れて待っていた。

「…なんか、カザを見てたら メイクしたくなってきた」
「私も。 絶対化粧映えするよね!」

机の上にズラリと置かれた道具に、風祭は思いきり首を振った。

「いい、いい!」

じりじりと詰め寄るクラスメートから逃れ、教室を飛び出した。 すると壁に凭れる横山を見つけ、すかさず後ろに隠れる。

「…将?」
「横山くん 助けて!」

目の前を見れば数人の女子が立っていて、横山は風祭と交互に見遣る。

「何 この状況」
「…やめた、カザを可愛くしたら、間違いなく横山くんが襲うもの。」
「失礼なこと言うな、小島…」

目があった瞬間、あからさまにため息をつく彼女にカチンときた。その間、ずっと後ろに隠れていた風祭がそろっと顔を出す。

「…襲うんじゃないわよ」
「だから何言って…」

小島が念押すように言い残して、教室に戻って行った。

「ありがとう横山くん ごはん食べよ?」
「ん、そうだね」






いつもの場所。
屋上に続く階段に腰を下ろし、お弁当を広げる二人。 閉ざされている屋上の窓から差し込む光で、わりと温かいその場所。 誰も来ない秘密の場所みたいで、2人はそこが好きだった。

「今日はあったかいねー」

そう言って風祭はぬくぬくとひなたぼっこしながら、お弁当に手を付ける。

「…何だったの さっきの」
「ん? ああ、僕は化粧映えする顔なんだって。 メイクしたいって小島さんとクラスの子が…」
「で、あんなに女子が群がったのか」


化粧映えする顔…、そう言われるとつい、風祭の顔を見てしまう。

そして気付いた。

いつもと違う。
陽の光に当てられて、一際艶やかになるそこ。

「…何か、付けてる?」

横山が指差しながら問い掛けた。 それに風祭は、こくんと喉を鳴らし口に入っているものを飲み込んでから頷いた。

「唇が荒れてるって、小島さんに塗られたの。 …ウォーターリップなんだって」

普通のリップよりも潤いを与えるグロスみたいなそれ。 そしてそれが、透明じゃなく淡いピンク色だったため、唇の艶やかさをさらに強調させた。

なるほど、化粧映えする顔だ。

「横山くん…?」

ただリップを塗っただけなのに、風祭を正視できない。 ふいっと顔を背ける。

「(頑張れ、俺の理性…)」

なんて横山の思いとは裏腹に、風祭は首を傾げる。もう限界だった。風祭と目が合った瞬間、顔を寄せそこに自分の唇を重ねた。

軽く触れるようなキス。
わざとリップ音を立てて離れた。
風祭はしばらく呆気に取られた顔を浮かべてから、一気に頬を赤らめて横山の顔を見た。

すると予鈴が鳴り、横山が先に立つ。
「…当分化粧禁止。」

風祭にそう伝え、急ぎ足で階段を降りていった。







横山が教室に戻るとクラスメートがニヤニヤとからかうような笑みを浮かべていた。

「お前… それ、どうした?」
「それ?」

小田のバカにしたような笑みを含んだ表情に眉が上がる。

「潤ってんなー、唇」

部分的に、と付け加えて話す小田に、横山ははっとして手で口を隠す。


(ヤバ……)


授業が終わったら、隣のクラスからやってくるであろう女生徒対策を練る横山だった。

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