CP

□片想い終了宣言
1ページ/2ページ

ぶっきらぼうだけど優しくて、意地悪だけど思いやりがある人。
一緒にいると安心して、いつの間にか出来るならずっと一緒にいたいと思うようになっていた。
そんなある日、二人でいるときだった。
ふと翼さんが思いを寄せている人がいるのか気になった。
何となく聞いた質問に翼さんは驚いたような顔をしてから、ふっと表情を緩めた。

「いるよ、好きなやつ」

その人を思い浮かべているのか柔らかい表情を浮かべている。
翼さんをそんな顔にさせるのはどんな人なんだろうと気になった。
僕が何も言えずにいると翼さんが苦笑しながら話を続けた。

「けど…見込みはないんだよね」

「そうなんですか・・・」

翼さんがちらっとこっちを見た気がしたけど俯いていたのでどうだかわからない。
唐突に話を始めてしまったから会話の続きなんて考えていなかった。

数秒の沈黙に耐え切れなくなって躊躇いがちに口を開いた。

「僕もいるんです、好きな人」

「・・・・・・そう・・・」

苦し紛れに出た一言は僕からすれば告白同然だけど、翼さんは心底意外そうな顔をした。
それから一度大きく息を吐いてグラスの中身を一気に飲み干した。

もう一度吐き出された息はやっぱり重い。

「まぁ僕も見込みなんてほとんどないんでですけど」

「お互い大変な相手を好きになっちまったな」

いつの間にか柔らかい表情は消えていて目を瞬かせる。
見込みのない恋のことを考えたせいか、翼さんは辛そうな表情をしている。

「お前もがんばれよ」

「はい、翼さんも」

何か話題はないかと考えを巡らせていると、翼さんがぽつりと呟いた。

「鈍感って、罪だよね・・・・・・」
「本当に」

翼さんが言わないでよと言いたい衝動をぐっと堪える。
僕の気持ちなんかちっとも気付いてないくせに。
僕が小さくため息をつくと、翼さんがバンと叩いて立ち上がった。
あまりの勢いに驚いて翼さんを見上げる。

「明日、告白する」

ダメかもしれないけど言わずに終わるよりかはマシだ。
そう言った翼さんの横顔は男らしさがあった。
辛い気持ちを隠して精一杯に笑う。

「もしダメだったら愚痴、ききますよ」

「・・・サンキュ」

驚いた顔をしたあと、切なげに目を細めた意味をこのときはまだ知らなかった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ