CP

□翼将
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―――そろそろ日付も変わろうとしている頃

宿舎の談話室には僕と将の2人だけ。
お互い自分のやるべき課題を無言でこなす。
かれこれ1時間くらいは経過していると思う。
しばらく赤シート片手に暗記に励んでいたが一旦ページをめくる手をとめる。
ふと将を見れば1時間前と同じように一生懸命単語帳と格闘していたようだ。

「将…」

少し小さめに名前を呼んでみた。突然名前を紡がれた将はゆっくりと目を瞬かせてこちらを見る。

「翼さん…僕…」

そう小さく呟いた将に、どうしたのかと首を向けようとしたら。
こてん、と黒い頭が肩に寄りかかってきた。

……不意打ちに参考書を落としそうになった。

滅多にない将からの接触に、声や行動がぎこちなくなる。

「な、ど、どうしたんだ、いきなり」

「少しだけ…このままで」

将はそう囁くように呟くと目を閉じた。呼吸と共に上下にリズムよく動いているのがわかる。

(寝たのか……)

こっちの気もしらないで、と穏やかに吐息を漏らす将に内心毒づく。
柄にもなく顔が熱くなるのを必死に堪えている自分が馬鹿みたいだ。
未だにドキドキと早鐘を打つ心臓に悔しく思いながら肩口に埋められた顔を横目で見る。

さらさらとした髪の毛の隙間から見えたのは、真っ赤に染まった頬だった。それに気づいた瞬間、無意識のうちに入っていたのであろう力が肩から抜けた。

どうしようもなく、愛しい。
参考書を脇に置き、空いた手を将の肩に回した。少し体重を預けてくれた隣の存在に、言葉にしきれない気持ちで満たされる。

将の髪を梳さらさらとくようにして優しく撫でてやる。
未だ消えない赤をお互いの頬に残しながら、ただ静かに寄り添っていた。



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