ALL

□One day
1ページ/2ページ

シリウス号は、久しぶりにこの港に着いた。

順番を待ち。

立ち並ぶ船の間にこの船を滑り込ませる。

もちろん、海賊旗やらは商業船のものに取替え済みだ。


船を降りて、停泊の手続きをしているソウシの所に女性たちが集まってきた。

笑顔で対応するその姿に感心しながら、トワは今日の予定を考えていた。

リュウガ
「取り合えず、夜までは自由にしろ。いつもの酒場で落ち合おう」

威勢良くそれだけ言うと、リュウガは早速その場所へと向かっていく。


それぞれがその目的に応じてこの場を離れていった。

ソウシは裏路地開業をするらしい。

さっき群がっていた女性たちは、ソウシの元患者らしかった。

トワ
(手伝った方がいいのかな。でも…)

そんな事を考えていると、その本人が声をかけて来た。

ソウシ
「トワはどうする?」

トワ
「…リカーの足取りが無いか、探ってみたいんですが」

ソウシ
「そうか。あまり無理はしないように。私は5番街の裏に居るから」

トワ
「いつもの所ですね!」

ソウシ
「何かあったら来なさい」

トワ
「分かりました」

そう言ってソウシに手を振ると、トワは取り合えず繁華街の方へと向かった。



トワは未だ懸賞金の額も低く、それはつまり海賊としての認知度が低いと言う事だった。

だから、一般人のフリをして情報を集める事が出来た。

元々のその気質から、怪しいと疑われた事も無い。

シリウス海賊団の、優秀な諜報部員なのだ。


今回はリカー海賊団の情報。

ロイがシリウスの宝を盗み、逃亡しているためだ。

トワ
「店長、ありがとう!」

店長
「またお店手伝ってね〜!」

野太い声に言われながら、トワはその馴染みのペットショップを後にする。

リカーの目ぼしい情報は得られなかったが、先日19番街の裏で喧嘩があったらしい。

街の男と船乗りの喧嘩だ、ということだけは分かった。

トワ
(…船が見つかれば、早いんだけど)

トワは鍛冶屋を覗く。

トワ
「こんにちは!」

店員
「おう、久しぶり!」

トワ
「この前教えてもらった本、役に立ちました!」

店員
「だろ?最新のものを知っておかねぇと、時代に乗り遅れるぜ!」

トワ
「…なんだか、忙しそうですね」

店員
「ああ、無茶言ってくるヤツがいてよう。明後日までに剣と銃の整備をしておけってんだよ」

トワ
「急いでるんですね」

店員は、トワを手招くと身をかがめて小さな声で言った。

店員
「…ワケあり、っぽいんだよ」

トワ
「!」

店員
「金払いは良かったからさ、こちとら何も聞かなかったけどよ。ありゃ海賊か何かだぜ」

トワ
「海賊!」

店員
「髪になんかちゃらちゃら着けてよ〜。変な声で笑うんだよ」

トワ
(…多分、ビンゴ!)

店員
「おい?」

トワ
「あ!いえ、怖いなぁ、と思って」

店員
「だろ?まったく、因果な商売だぜ…」

トワ
「…その人は、明後日武器を取りに来るんですか?」

店員
「ああ、そうだけど…それが?」

トワ
「じゃあ、僕のこの短剣の整備お願いできますか」

店員
「?」

トワ
「えっと、…海賊だって、他のお客さんが居るところでは暴れ辛いかも、と思って」

本当はそんな事ではなく。

ロイが現れた瞬間を押さえられたら、と思ったのだ。

店員
「はは!お前さんはいい子だね。どれ、見せてみな」

トワ
「はい」

店員
「…これは柄の部分を少し調節するだけで大丈夫だな。明日には出来るよ」

トワ
「じゃあ、明後日取りに来ます!」

店員
「ダメだ。お前さんみたいな子を危険な目に合わすわけにはいかねぇ。明日ちゃんと来い」

トワ
「…わかりました。ありがとうございますっ!」

店員
「おう、預かっとくぜ!」

トワ
「よろしくお願いします!」

そう言って、トワは鍛冶屋を後にした。


トワ
(もうちょっと調べたいけど…)

もう太陽は沈み、名残のようなオレンジ色を建物の隙間から覗く海際に残すだけだった。

トワ
(取り合えず、酒場に向かおう)

トワはそのまま、酒場へと足を向けた。

.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ