リュウガ
□大人の…
1ページ/1ページ
**1/20 14:37**
○○○
「どうしよう…」
リュウガの誕生日を船で過ごす事になり、シリウス号はとある港町に停泊していた。
それぞれが、宴用の買出しに出払っている。
○○○は雑貨店にいた。
○○○
(船長、何でも持ってるから…)
船長への誕生日プレゼントを買いにきたのだ。
治安の良いこの小さな港町は、思った以上に品物の質が良い。
ソウシが、島々の中継地点にあるからね、と言っていた気がする。
○○○
「んー」
シン
「その変な顔をどうにかしろ」
○○○
「シンさん」
シン
「…プレゼントは決まったのか?」
一緒に来ていたシンは、どうやら目当てのものを買ってしまったようだ。
○○○
「え、っと…」
シン
「プレゼントを選びたいというから、良い店につれて来てやったんだぞ」
そう言ってため息をつかれる。
○○○
「でも、船長何でも持ってるし…」
きゅ、と○○○の眉間に皺が寄る。
シン
「!」
○○○
「う…」
シン
「こんな所で泣くな」
○○○
「…泣きません」
泣きそうな顔をしているくせに。
この小さな店で1時間程ウロウロしていたのだ。
品物など見尽くしてしまっているだろうに。
シン
「…とりあえず、場所を変えるぞ」
○○○
「!」
シン
「何だその顔は。何か思いついたら、また戻ってくれば良いだけだろう」
○○○
「あ…。はい!ありがとうございます」
シンは○○○を連れてその店を後にした。
**1/20 15:03**
○○○
「え…、っと」
○○○は甘い香りに包まれていた。
店の入り口付近には、沢山のケーキがディスプレイされている。
その奥は、こうして座ってそのケーキを食べていけるようになっていた。
植物で軽く遮られたそこは、人の気配は感じるものの外からは見えない。
○○○
(なんか、落ち着くけど…)
白を基調としたシンプルな作りの店内。
○○○がちら、と目をやると、目の前にはシンがいる訳で。
シン
「決まったか?」
○○○
「はい」
店の人を呼ぶと、シンは適当にオーダーをしていく。
シン
「ケニルワースとミルフィーユ・オ・ショコラ。…お前は?」
○○○
「ダージリンと、タルト・タタンをお願いします」
店員
「かしこまりました」
店員が去ると、シンはふ、と軽く息を吐いた。
シン
「さて…。お前は何を買うつもりだったんだ?」
○○○
「…。船長が身に着けられるもので、邪魔にならなくて、あまり高くなくて…」
シン
「つまり、具体的なものは考えていなかったんだな」
○○○
「う…」
店員が紅茶とスイーツを運んでくる。
すぅ、とカップに注がれる紅茶の香りは○○○を少し和ませた。
シン
「お前は忘れているようだが」
○○○
「?」
シン
「船長は『お前がプレゼントでいい』と言っていたじゃないか」
○○○
「!!…そ、んな」
真っ赤になって俯いてしまった○○○を気にも留めず、
シンはショコラを長めのスプーンですくうと、ぱく、と口に入れた。
シン
「欲しい物が分かっているなら、それをやるのが一番だろう?」
○○○
「う」
シン
「どうすればいいか教えてやるから、心配するな」
そう言って、シンはこの上なくにっこりと笑った。
○○○
「でも」
シン
「…こういう店には一人では来れないからな。その礼だ」
有無を言わさない笑みと畳み掛けに、○○○はうっかり頷いてしまったのだった。
その笑顔の裏に、企みがあるとも知らずに。
end.