ハヤテ
□Grazie
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ハヤテ
「お、首筋にまだチョコが残ってんな」
○○○
「ホントに?」
ハヤテ
「ああ。バレンタインのチョコ、オレはコレでじゅーぶん」
○○○
「え?」
ハヤテが○○○の首筋に付いたチョコをペロリと舐めた。
○○○
「あっ」
○○○
(どうしよう。恥ずかしくってハヤテの顔が見られない)
俯く○○○の肩をハヤテが抱いてくれる。
ハヤテ
「気持ちが伝われば、チョコなんてなくてもいい」
「好きだぜ、○○○」
○○○
「私もだよ」
甘いチョコレートは手に入れられなかったけど、こうしてハヤテと2人で甘い時を過ごせた。
これからも、もっともっと甘い時間を大切にして行こう。
ハヤテの体温を感じながら、○○○は強くそう思っていた。
○○○
「ん…」
ハヤテは○○○の髪を鼻で掻き分けるようにして、懐いている。
ハヤテ
「お前がチョコになったとき…」
耳に軽くキスをされ、○○○はくすぐったさに身を竦めさせた。
○○○
「んっ」
ハヤテ
「マジで心臓止まるかと思った」
○○○
「…心配かけて、ごめんね」
ハヤテ
「オレ、ホント嫌なんだよ…」
○○○がハヤテの背に手を回す。
トリュフのラッピングの袋がカサリ、と音を立てた。
ハヤテ
「大事なヤツが、居なくなるの」
○○○
「ハヤテ…」
ハヤテは柔らかい所を探すかのように、いくつものキスを。
ハヤテ
「ん…」
○○○
「ハヤ…!」
ハヤテ
「ばっか。あちこちにチョコ付いてんだよ」
○○○
「え、ほ、ホント?」
ハヤテ
「ホントホント…」
ちゅ、ちゅ、と頬に、額にハヤテの唇が触れる。
本当の所、チョコなんてどこにも付いてはいないのだが。
○○○
(くすぐったい、けど…)
首筋にキスをされ、○○○はひくん、と体を震わせる。
○○○
「ん…」
きっと、顔はもう赤い。
それに気を良くしたように、ハヤテは笑う。
ハヤテ
「…○○○」
○○○
「んう」
そのまま唇を塞がれた。
ハヤテの舌が、どこか遊ぶように○○○の舌を撫でる。
味見でもしたのだろうか。
ほんのりと、チョコの味がして、甘い…
ハヤテの手が、するりと動く。
○○○のうなじに添えられて、もう片方は腰の辺りに。
する、と上着の中にその手が滑り込んだ。
○○○
「ちょ、ハヤ…」
ハヤテ
「ん…?」
○○○
「やめ…っ」
背の素肌を直に触られ、ゾクリとした感覚が背を這う。
ぎゅ、とハヤテの背にしがみついた。
いつの間にか、ハヤテに押されるようにして○○○はそのままマストに背をつけた。
ハヤテはまた、首筋にキスを落としたかと思うと。
○○○
「!」
片方の手が、そのままするりと胸元へ滑り込む。
○○○
「ここっ、そと…」
ハヤテ
「誰も来ねぇって」
○○○
「そ、言う問題じゃ、んんっ!」
胸先に触れられ、○○○の体が跳ねる。
ハヤテ
「あー…」
○○○
「!!」
真っ赤になってしまった○○○に、ハヤテは笑みを零す。
ハヤテ
「全部、オレのもんだから」
○○○
「!」
そう言ったハヤテは、いつもよりも大人びているようで。
ハヤテ
「…だろ?」
○○○
「う…」
躊躇いながらも○○○が小さく頷くと、ハヤテはちゅ、と触れるだけのキスをした。
す、と上着の下にあった手が、そのまま背を滑る様にして○○○を抱きしめた。
○○○は、目の前にあるハヤテの首筋に顔を埋めた。
体温の高いハヤテの体。
ハヤテ
「○○○…」
ハヤテはぎゅ、と強く抱きしめてきた。
それはまるで、○○○の存在を確かめるかのように。
○○○は、ほ、と息を吐く。
風で少し冷やされた鼻先が、ハヤテの肌で温められてゆく。
○○○
(あったかい…)
ナギ
「ハヤテ!いるか!!」
ハヤテ
「!!」
厨房の扉が開く音と、ナギの声が同時に聞こえる。
ハヤテ
「…何だよナギ兄!?」
マストに隠れて、恐らく二人の姿は見えないだろう、と、取り合えずハヤテは声を上げた。
する、と○○○の上着から手を抜く。
ナギ
「ああ?何だよじゃねぇよ!さっさと片付けろ!!」
ハヤテ
「!、悪ぃ、直ぐ行く!!」
ナギ
「…おう!」
パタン、とドアの閉まる音がする。
二人で顔を見合わせ、笑う。
○○○
「ほら…」
ハヤテ
「こっちまで来てねぇじゃん」
○○○
「それでも!」
ハヤテ
「まあな。…片付けてくる」
○○○
「うん。…あ!」
直ぐに厨房に向かおうとしたハヤテを、○○○は腕を引いて止めた。
ハヤテ
「?」
○○○
「あの…」
ハヤテ
「何だ?」
○○○
「…チョコ、ありがとう!」
○○○の満面の笑みに、ハヤテは驚いたようにして、見る間に顔を赤くした。
ハヤテ
「おっ、前…」
そのままハヤテは、両手でぐしゃぐしゃっと○○○の頭を撫でた。
○○○
「わ…!」
○○○は慌てて髪を直す。
○○○
「もう…。んっ!」
何かが唇に触れた、と思ったら、それはハヤテからのキスで。
ハヤテは○○○の両頬を手で押さえ込むようにし、長い長い、キスを。
ハヤテ
「ん…」
○○○
「…ふっ」
ようやく唇が離れ、○○○はゆっくりと目を開ける。
ハヤテは真っ赤な顔で横を向いたまま、片手で○○○の頭をやっぱりぐしゃっと撫でた。
ハヤテ
「お前、可愛すぎ!」
○○○
「!!」
ハヤテ
「早く行かねぇと、ナギ兄に怒られちまうだろ…」
○○○
「ん!」
少し痛い位に強くもうひと撫でだけすると、ハヤテは厨房へ向かって走り出した。
一度○○○の方を振り返り。
ハヤテ
「それ、食ったら感想聞かせろよ!」
ちょっと怒ったような、やっぱり赤い顔でそういった。
○○○は知っている。それは、照れている時のいつものハヤテだ。
○○○
「…うん!」
○○○の返事に満足そうに笑うと、ハヤテは行ってくる、とまた足を向けた。
○○○
(…あ)
○○○はもそもそと服を直した。
部屋へ戻ろうと甲板を歩き出すと、もう厨房の辺りにすらハヤテの姿は無かった。
手には、大きなトリュフ。
○○○
(どうやって食べよう…?)
そう思いながら笑うと、○○○はそのまま階段を降りた。
きっと、このチョコと同じくらい
大きな大きな
ハヤテの思い
○○○
(全部、ちゃんと食べるから)
そう思いながら。
end.
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バレンタイン企画
桃色の薔薇の花言葉
Grazie「感謝」
でした!