ハヤテ

□sincerity
1ページ/1ページ

※月夜の運動会のネタばれ
 ハヤテ編その後になります。



******



○○○
「ん…ふっ」

ハヤテ
「…ふ、っ」

ふ、と二人の唇が離れた。

ハヤテの瞳は、なんだか潤んでいるようにも見えて。

○○○
「ハ…、んっ」

まるで足りないとでも言うように、幾つものキスが落ちてくる。

ソウシからは、安静にするように言われてるけど…

○○○はお返しとばかりにパクリ、と、ハヤテの唇を食んでみる。

ハヤテ
「おま…」

少し顔を赤くして、ハヤテは顔を離した。

○○○
「え、へへ…」

ハヤテ
「〜!へへ、じゃねぇよ。もう寝ろ」

○○○
「…」

ハヤテは○○○の顔を見て、何だか拍子抜けしたような顔をしてから、笑った。

ハヤテ
「そんな残念そうな顔すんな」

○○○
「…!うそ、そんな顔してた?」

○○○は慌てて自分の顔を抑えた。

ハヤテは笑って、○○○の頬を軽く摘む。

ハヤテ
「してたっつの」

○○○
(わ…!)

真っ赤になった○○○を見て、殊更ハヤテは笑顔になる。

ハヤテ
「続きは、今度な」

○○○
「…う、でも、大丈夫っぽいし…」

ハヤテ
「お前、気ぃ失ったんだぞ?甘く見んなって」

○○○
「…」

ハヤテ
「ソウシ先生からも言われてるし」

そう言って、ハヤテは○○○をぎゅ、と抱きしめた。

その腕は力強く、ちょっと苦しくて○○○はもがいた。

○○○
「ん…」

小さく耳に届いた言葉。

ハヤテ
「お前が倒れた時、マジでビビッた」

○○○
「…!ハヤテ…」

ハヤテ
「ああいう倒れ方してさ、そのままだったヤツもいるから…」

少しハヤテの腕が緩んだので、○○○は顔を上げる。

心配気なハヤテが、○○○の顔を覗きこんでいた。

ハヤテ
「このまま眠れ。んで、ちゃんと明日の朝目を覚ませよ」

額にちゅ、とキスが落ちる。

○○○
「ハヤテ…」

○○○は頷くと、ハヤテの腕の中で目を閉じた。

その温かさに、包まれながら。





すやすやと眠る○○○。

ハヤテ
(やっべ、マジ拷問かも…)

伏せられた長いまつげや、薄く開いた唇。

パジャマの胸元は少し開き、そのふくらみを少し覗かせる。

柔らかい体と、そのふわりとした息がハヤテの鎖骨辺りに掛かる。

ハヤテ
(○○○…)

そのまま誘われそうになる所を、ぐっと抑えた。

体が熱を帯びそうになり、ハヤテは冷や汗をかく。

ハヤテ
(やべ…!えっと、こういう時は、羊を数える…じゃなくて!)

ハヤテはひとつため息を付いた。

ハヤテ
(剣の技の一つでも…)

○○○
「ん…」

ハヤテ
「!!」

○○○がモゾリと動く。

ハヤテがそろりと○○○を見ると、○○○はただスヤスヤと眠り続けていて。

ハヤテ
(マジ勘弁〜!)

取り合えず羊を高速で数えてみたりして、心頭滅却!とか訳の分からないことを唱えてみる。

○○○
「んふふ…」

ハヤテ
「…!ったく、何笑ってんだよ…」

こっちは必死だと言うのに。

思わず、むに、と○○○の頬を摘むと、○○○は眉間にしわを寄せた。

ハヤテ
「…ハハッ」

手を離し、優しくさすってやると、眉間のしわも消える。

ハヤテは○○○の口元に、その指を触れさせた。

柔らかい唇の感触と共に、その○○○の息が掛かる。


ハヤテ
(…。生きてんなぁ)



○○○が倒れた時、気が気じゃなかった。

ソウシは多分脳震盪だろう、と言ったが、打ち所が悪ければ最悪、とも言ったのだ。


ハヤテはぼんやりと、その時の事を思い出していた。



一番最初に思ったのは、そんなのマジで無いだろう?って事。

なんかもう、色んな事が考えらんなくなって。

俺に今できることは、この勝負に勝つ事だけだ、なんて思って。

そしたら自然に、シンに頭を下げていた。


今考えたら、バカだなぁと思う。

倒れた○○○の側に居てやる事の方が、大事だったんだ、って。

でも、俺、お前が絶対に目を覚ますと思ったから。

その時、俺たちが負けてたんじゃ格好つかねぇって…

いや、違うか。

俺たちが勝てば、○○○が目を覚ますような気がしたんだよ。




ハヤテは眠っている○○○を、起こさないようにそっと抱き寄せた。

ハヤテ
「ちゃんと明日、目ぇ覚ませよ…」


眠れそうに無いままの夜が更ける。


一人の男の、


願いを込めて。



end.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ