ハヤテ
□sincerity
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※月夜の運動会のネタばれ
ハヤテ編その後になります。
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○○○
「ん…ふっ」
ハヤテ
「…ふ、っ」
ふ、と二人の唇が離れた。
ハヤテの瞳は、なんだか潤んでいるようにも見えて。
○○○
「ハ…、んっ」
まるで足りないとでも言うように、幾つものキスが落ちてくる。
ソウシからは、安静にするように言われてるけど…
○○○はお返しとばかりにパクリ、と、ハヤテの唇を食んでみる。
ハヤテ
「おま…」
少し顔を赤くして、ハヤテは顔を離した。
○○○
「え、へへ…」
ハヤテ
「〜!へへ、じゃねぇよ。もう寝ろ」
○○○
「…」
ハヤテは○○○の顔を見て、何だか拍子抜けしたような顔をしてから、笑った。
ハヤテ
「そんな残念そうな顔すんな」
○○○
「…!うそ、そんな顔してた?」
○○○は慌てて自分の顔を抑えた。
ハヤテは笑って、○○○の頬を軽く摘む。
ハヤテ
「してたっつの」
○○○
(わ…!)
真っ赤になった○○○を見て、殊更ハヤテは笑顔になる。
ハヤテ
「続きは、今度な」
○○○
「…う、でも、大丈夫っぽいし…」
ハヤテ
「お前、気ぃ失ったんだぞ?甘く見んなって」
○○○
「…」
ハヤテ
「ソウシ先生からも言われてるし」
そう言って、ハヤテは○○○をぎゅ、と抱きしめた。
その腕は力強く、ちょっと苦しくて○○○はもがいた。
○○○
「ん…」
小さく耳に届いた言葉。
ハヤテ
「お前が倒れた時、マジでビビッた」
○○○
「…!ハヤテ…」
ハヤテ
「ああいう倒れ方してさ、そのままだったヤツもいるから…」
少しハヤテの腕が緩んだので、○○○は顔を上げる。
心配気なハヤテが、○○○の顔を覗きこんでいた。
ハヤテ
「このまま眠れ。んで、ちゃんと明日の朝目を覚ませよ」
額にちゅ、とキスが落ちる。
○○○
「ハヤテ…」
○○○は頷くと、ハヤテの腕の中で目を閉じた。
その温かさに、包まれながら。
すやすやと眠る○○○。
ハヤテ
(やっべ、マジ拷問かも…)
伏せられた長いまつげや、薄く開いた唇。
パジャマの胸元は少し開き、そのふくらみを少し覗かせる。
柔らかい体と、そのふわりとした息がハヤテの鎖骨辺りに掛かる。
ハヤテ
(○○○…)
そのまま誘われそうになる所を、ぐっと抑えた。
体が熱を帯びそうになり、ハヤテは冷や汗をかく。
ハヤテ
(やべ…!えっと、こういう時は、羊を数える…じゃなくて!)
ハヤテはひとつため息を付いた。
ハヤテ
(剣の技の一つでも…)
○○○
「ん…」
ハヤテ
「!!」
○○○がモゾリと動く。
ハヤテがそろりと○○○を見ると、○○○はただスヤスヤと眠り続けていて。
ハヤテ
(マジ勘弁〜!)
取り合えず羊を高速で数えてみたりして、心頭滅却!とか訳の分からないことを唱えてみる。
○○○
「んふふ…」
ハヤテ
「…!ったく、何笑ってんだよ…」
こっちは必死だと言うのに。
思わず、むに、と○○○の頬を摘むと、○○○は眉間にしわを寄せた。
ハヤテ
「…ハハッ」
手を離し、優しくさすってやると、眉間のしわも消える。
ハヤテは○○○の口元に、その指を触れさせた。
柔らかい唇の感触と共に、その○○○の息が掛かる。
ハヤテ
(…。生きてんなぁ)
○○○が倒れた時、気が気じゃなかった。
ソウシは多分脳震盪だろう、と言ったが、打ち所が悪ければ最悪、とも言ったのだ。
ハヤテはぼんやりと、その時の事を思い出していた。
一番最初に思ったのは、そんなのマジで無いだろう?って事。
なんかもう、色んな事が考えらんなくなって。
俺に今できることは、この勝負に勝つ事だけだ、なんて思って。
そしたら自然に、シンに頭を下げていた。
今考えたら、バカだなぁと思う。
倒れた○○○の側に居てやる事の方が、大事だったんだ、って。
でも、俺、お前が絶対に目を覚ますと思ったから。
その時、俺たちが負けてたんじゃ格好つかねぇって…
いや、違うか。
俺たちが勝てば、○○○が目を覚ますような気がしたんだよ。
ハヤテは眠っている○○○を、起こさないようにそっと抱き寄せた。
ハヤテ
「ちゃんと明日、目ぇ覚ませよ…」
眠れそうに無いままの夜が更ける。
一人の男の、
願いを込めて。
end.