ハヤテ
□Memory of summer
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ぽとり、と一つになった線香花火が落ちて、辺りは少しだけ暗さを増した。
パチパチと音を立てていたものが無くなると、何だか辺りが静かに感じる。
屋台の騒がしさより、風が木々を通る音の方が良く聞こえてくるようだ。
ハヤテ
「…」
ふ、とハヤテの唇が、○○○から離れた。
○○○
「ハヤ…」
ハヤテの手が、す、と○○○のうなじに伸びる。
○○○
「んっ」
すぐさままた、唇が触れた。
今度は触れただけじゃなく、それはゆっくりと、○○○の唇を食む。
○○○
「んっ、ちょ、ハ…」
突然の事に驚いた○○○が、思わず体を離そうとすると。
ハヤテ
「…逃げんなよ」
○○○
「…!」
あまりにも切なげに、そんな事を言うので。
○○○
「で、でも…」
ハヤテ
「○○○…」
そっとそっと、そう囁かれて。
まるで壊れ物にでも触るように頬に触れる。
その指が、愛しい、と言っている様で。
○○○
「…ん」
もう一度、二人は唇を寄せた。
ドーン!!
ハヤテ
「うわっ!何だ!?敵襲かっ?」
○○○
「あ…」
見上げると、夜空には大きな花火がハラハラと散っていくのが見える。
○○○
「花火…」
ハヤテ
「お、おう…」
ドォン、ドォン。
続けざまに大きな花火が夜空を飾ってゆく。
ハヤテ
「…」
○○○
「…」
ハヤテ
「…びびった〜」
○○○
「ふふっ」
二人で寄り添って、花火を見上げる。
ハヤテ
「…すっげー、キレイだな」
○○○
「うん」
ひとつ、またひとつと。
咲いては花火は散って行く。
○○○
(こうして二人で花火が見られるって…。何だか嬉しい)
ひとつひとつ、二人の思い出が増えてゆくのがこんなに嬉しいなんて。
ハヤテ
「な、○○○」
○○○
「?」
ハヤテ
「その、また…」
ハヤテは少し躊躇ったようにして、○○○の膝の上に、ぽん、と手を乗せた。
ハヤテ
「また、二人で来ような」
○○○
「…!うん!!」
ハヤテはヘヘ、と笑うと、立ち上がる。
ハヤテ
「あー。なんか腹減らねぇ?」
にっこりと笑ったハヤテの後ろに、大きな花火が上がる。
○○○
(わ…!なんか、いいな…)
もともと華やかな居姿のハヤテに、その大輪の花は良く似合っていて。
ハヤテ
「○○○?」
○○○
「あ、ううん。なんでもない。そうだね、何か食べたいかも」
ハヤテ
「んじゃ、屋台で何か買って、食いながら見ようぜ」
○○○
「ふふっ。じゃ、急がないとね!」
ハヤテ
「おう!」
ドォン、ドォンと花火の音が鳴り響く。
二人は手を取って、屋台の明かりの中へと消えていった。
end.