Tesoro

□16.
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瞬く星はきらめきを増し。

少し冷たくなった潮風が、肌を撫でる。


思い返せば、長かったような。

ナギ
「部屋、戻るか」

○○○
「うん」

ナギはそのまま後ろを向く。

○○○はそれを追いかけ、そっとナギの手のひらに手を滑り込ませる。

ナギは優しく、握り返してくれた。


ナギは『…話聞いたからって、結婚しないとか無しだぞ』とか言っていたけれど…

話を聞く限り、やましい所など微塵も無くて。

ただ、切ないような物語だけが○○○の心に浮かぶ。

ソリアは、ナギが好きだったのだから。

ナギはその事に気がついているのだろうか。

ひょっとしたら、○○○が思う物語と、ナギが思う物語は少々違っているのかもしれない。

きゅ、と胸が締め付けられるようで、○○○はナギの腕に自分の腕を絡めた。

ナギはソリアの事を、どう思っていたのだろう。

以前、何かの拍子にナギが言った事がある。

『女なんてどれも同じだと思っていた』

それは、ソリアも他の人も、同じだと思っていたという事なのだろうか…

ナギの横顔を見つめると、ナギがその視線を返す。


○○○は、ぎゅ、とナギの腕に強く縋った。


今、それを聞いてどうするというのだろう。


そんな事を思ったから。




部屋に、入り。

波の音だけが静かに響いている。

以前貰ったシャンパングラスを取り出すと、ナギはそれに『とっておき』を注いだ。

ナギ
「Tesoro」

○○○
「?」

ナギ
「シャンパンの名前だ」

○○○
「テ…?」

ナギ
「…宝物、って意味だ」

ナギは少し、照れくさそうに笑った。

○○○も笑って、グラスを見つめる。

ランプの炎に照らし出されて、シャンパンが揺れる。

小さい気泡が、グラスの底からまるで天に向かうように一筋の線を描いて立ち上ってゆく。

きっと、こんな風に。

新しい出来事が二人の間に現れては消えてゆくのだろう。

でも。

○○○
(ずっと、こうしていたい…)

目の前に、ナギがいる。



肌と、肌が触れ合う。

今までとなんだか違うような気がするのは、何故だろう。

ナギの手が触れるたび

唇が触れるたび

心が

体が

開いてゆくようで



ナギに導かれて高みに昇る。

○○○
「んっ…!」

その瞬間、愛しい人の声を聞いたような気がした。




○○○はうつつに夢を見る。

シャンパングラスの泡は、そのまま天へと昇り

きらめく星となって

いつまでも、輝いていた。


end.

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