トワ
□Scherzando
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このお話はクリスマス トワ編のその後のお話です。
ネタばれを含みますので、閲覧にはご注意下さい。
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○○○
「きゃ!」
○○○は部屋で、トワに突然抱きしめられた。
○○○
「ト、トワくん…?」
トワはぱっと手を離すと、エヘヘと笑った。
トワ
「楽しかったね!」
○○○
「うん!」
漸く二人は、シリウス号に戻ってきていた。
無断で1泊し、夜遅く帰ってきた二人にシンの小言が飛ぶ。
それを笑ってソウシが宥め、ナギは呆れ顔でココアを出してくれた。
ハヤテはすでに寝てしまっているらしい。
シン
「船長が戻らないから、出航していなかっただけだ。普通なら置いていくからな」
そう言われて、二人はひたすら謝ったのだった。
コートを片付けたりしていると、部屋の隅で、カサ、と音がする。
トワ
「あ!チュー太にご飯あげないと!」
○○○
「!」
トワ
「○○○さん、先にお風呂入って。僕、ナギさんからご飯分けて貰ってくる」
○○○
「…うん。じゃあそうしようかな」
○○○は服をそろえると、そのまま風呂場へと向かった。
トワ
「…さん、○○○さん」
○○○
「…ん」
トワ
「そんな格好で寝たら、風邪引くよ」
トワの声で目が覚めた。
見ると、トワは風呂上りなのだろう。
少し濡れた髪のまま、○○○を覗き込んでいる。
○○○が風呂から上がり、トワを待っているとチュー太が現れた。
その食べ物を食べる姿を見ていたら…そのまま寝てしまったようだ。
トワ
「…ほら、手が冷たくなってる」
○○○
「!」
温かいトワの手。
トワ
「お布団入ろ?」
○○○
「うん」
もぞもぞと布団に入ると、トワは髪を勢い良く拭いて、ランプを消すと一緒に潜り込んできた。
ひんやりとしていた布団が、トワの熱で一気に温かくなる。
トワ
「…○○○さん、こっち」
○○○
「え…?」
そう言うと、トワは○○○を引き寄せて抱きしめた。
トワ
「ほら、こうすると温かいでしょ?」
○○○
「う、うん…」
熱くなった頬を隠すように、○○○は少し俯いた。
トワの手が、○○○の背にそっと添えられる。
○○○
(あったかい…)
トワ
「あのね、○○○さん」
トワは小さく呟いた。
○○○
「?」
トワ
「僕が小さい頃、クリスマスの夜こっそり起きてた事があるんだ」
額にトワの吐息がかかる。
トワ
「…お父さんが、サンタさんの格好してた」
○○○
「!」
トワ
「少し残念だったけど…。でも嬉しかったよ」
○○○
「トワくん…」
トワ
「ね、○○○さん。僕ね」
トワは○○○の髪を掻き分け、○○○の耳にかけるようにした。
トワ
「この船に乗ったから…サンタさん、信じようって思ったんだ」
○○○
「…?」
不思議そうな顔をして見上げる○○○に、トワは笑う。
トワ
「だって、クラーケンとか、幽霊船とか…。いるはず無いって思ってたものと、沢山出会って」
トワは○○○の頭をそっと撫でた。
トワ
「伝説だと思ってた宝物が見つかって」
ふ、と少し寂しそうに、トワは笑った。
トワ
「僕が王子様だったりして」
○○○
「トワくん…」
トワ
「この世界には、僕の知らない事がまだまだあるんだ…」
トワは自分に言い聞かせるようにそう言った。
トワ
「だから、いない、なんて決め付けちゃいけないんだ、って」
トワはニッコリと笑う。
トワ
「だって、ホントに本物のサンタさんに会えたんだよ!きっと人魚だっている。ドラゴンだって」
○○○
「…雪男とか、妖精とかも?」
トワ
「うん!」
○○○
「…ふふっ」
トワ
「僕はそれを沢山見てみたい…」
ちゅ、と額にキスが落ちる。
○○○
「!」
トワ
「○○○さんと、一緒に」
赤い顔で見上げる○○○の頬を、トワはそっと撫でた。
トワ
「○○○さん、好きだよ」
その少し大人びた顔。
○○○はそっと、頬に添えられているトワの手に手を添えた。
○○○
「…私も、好き」
トワ
「…ね、○○○さん」
少し目を伏せて、トワは続けた。
トワ
「僕ね、○○○さんとひとつになりたい」
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