title 夢話

□大
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『あっつ〜〜!!』

数日後
日差しが容赦なく照りつけてくるちょうどお昼時

イニシャル入りのハンカチとともに
図書館に向かった。


second


よくよく考えたら
彼と会ったのはあの日が初めてだ。

常連・・・と言えるほどでもないが
よくこの場に訪れる私が初めて会った、と言う事は
あまりここに来ない人なのかもしれない。

だから今日、図書館に来て彼に会えるという確信はどこにもなかった。

そうは言ってもやはり探さずにはいられない。

一通り館内を見て回るがその姿はどこにもなかった。

『やっぱり、だめか・・・。』

最後の最後にもう一度医学コーナーの本棚を目指した。
居る確率が高いのはそこくらいしか思い浮かばない。

ソロッと顔をのぞかせる。
何人かの人たちが本を手に取り、難しい顔をしていた。

一人ひとり確認していくと・・・。

『いた・・・!!』

まさか本当にいるとは思っていなかった分
見つけた嬉しさがこみあげてくる。

ササッと近づいて、恐る恐る声をかけた。

『・・・あの・・。』

「・・・何か?」

『えっと。ハンカチ。おとされませんでした?』

「ハンカチ・・?」

『はい。あ。あの、これ・・・。』

そう言ってハンカチを取り出す。
彼に見せると驚いたように目を見開く。

「これ・・。」

『数日くらい前、ここでこれを
貴女が落とすのを見て・・・。』

近くで見るとさらに顔の良さが認識できる。
顔が赤くなっていくのを感じた。

「そうか・・。ここに・・・。ありがとう。間違いなく俺のだ。」

『いいえ。良かったです。』

「なくなっているのに、家に帰ってから気づいたから。てっきりなくしたものだと思っていた。」

『私も。大学が忙しくて、早めに渡した方が、と思っていたんですけど。なかなかここに来れなくて・・。』

すみません。
と謝ると、彼は困ったように笑った。

「別に謝らなくても。むしろ、俺が謝るべきだと思うんだが・・。」

笑った・・・。
こんな風に、あなたは笑うんですね。

って!!何考えてんだ!!!

その時、周りにいる人々がこちらに向かって不快そうな視線を送っているのが見えた。

あ。やば。声、大きかったかな!?!?
そろそろ引き上げよう。

『あの、それじゃあ私、行きますね。』

そう言いながら頭を下げると。

「あぁ。あの。これから時間ありますか?」

『・・・はい?』

「お昼、一緒にどうかと思って。俺、まだ食べてなくて。」

もしかして、もう食べました?
そう聞かれて首を横に振る。

午後は珍しく、予定は入れていなかった。


「なら、よかった。行きつけの、美味しい店があるんです。」
『でも・・・。』

「ハンカチのお礼もしたいし。行きませんか?」

初対面・・ではないが、今日初めてしゃべった人にのこのこついて行く自分はおかしいだろうか?

でも、お礼、と言われれば
何となく断れなかった。

『じゃあ・・・。』

数分後、二人で図書館を後にした。




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