拍手連載

□これが運命というやつなのか
1ページ/1ページ




*3*



『行ってしまいましたと…さっ!!!!』
上げていた手を勢い良く振り下ろす。
ガッ、と鈍い音を立てて弁当箱のウインナーにフォークが突き刺さった。

「はいはい。あんたの弁当は知ったこっちゃないけど、物にあたっても何も意味ないわよ。」
『……。』
いやいや、待ちなさい。待ちなさいな沙雪。

『私の話し聞いてた!?』
「聞いてたわよ。いいから少し落ち着きなって。」
沙雪は困った顔で自分の弁当に入っていた卵焼きを私の弁当箱にいれた。

『…!!っありがと!!沙雪んちの卵焼き大好き!』

これで大人しくなる私も私だが、卵焼きの誘惑には勝てなかった。
あの藤原くんの衝撃発言の後、呆然としていた私が無事に意識を取り戻せたのは帰りの遅い私を沙雪が呼びに来たからだ。
そのまま、先程私の身に起こった事件を聞いてもらって…。あぁ。何でだろう。目の前が霞んできた。

「実はあんたが藤原に何かしてたりして……」
『それはない。』
「んな即答しなくても…!」

何かしてたりして…?何を??何をするんだよ藤原くんに!!
私は何もしてない!!なのになぜこんなに嫌われているのだ。
思い悩む私の頭に昼休み終了を知らせるチャイムが鳴り響いた。
*


私は今日ほど神を恨んだことはない。

「よーし!じゃあ、あと一人の生徒会役員は藤原だな。」

そう言った担任の言葉がやけに頭に響く。
黒板の“生徒会役員”と書かれた文字の下には私の名前。
その隣には藤原くんの名前。おいおいおい。何だこれは。

「じゃあ、藤原とよろしく頼むぞ。…次ー!図書委員は誰だー。」
担任は微笑みながらそう言って踵を返した。
五限目。ホームルームの時間。
何をするかと思えばいきなり始まったのがこの委員会、係決め。

「……っぶは!!あははは!!もうだめだ!!面白すぎる!!」
『沙雪…笑い事じゃないんだけど…!!』
「あっはは!!ごめんごめん!でもさ…あんた本当に藤原に呪われてんじゃない?」
そこまで言ってまた笑い出した沙雪に、もはや反論する気も失せた。
元々、最初から生徒会役員を希望していた私はさっさと黒板に名前を書いて、あとは役員二人のうちのもう一人…。
いっしょに役員となる相方を待っていたわけだが…。


じゃんけんの末、めでたく藤原くんが当選。
はい、おめでとうさん。どんまい、私。…って何でこうなる!!!
『なぜだ…神よ…!!』
相変わらず沙雪はそんな私を見て笑い続けている。
何はともあれ、決まったことは仕方ない。まずは作戦をねらねば。
どうやって藤原くんと接すべきか…!!
―――
――



それから放課後までの記憶が殆どない。
どれだけ作戦をねったって良い案が浮かばないからだ。

『もう、諦めよう。』

そうだ。なるようになれ!
そんな時担任に呼ばれた。
「おい。生徒会役員の二人ー。ちょっと来い。」

渋々行くと藤原くんと目があった。…があっという間にそらされた。コノヤロウ…。

「今日、お前たち委員会あるから。」
『……はい!?』
「……。」
「四時半に生徒会室な。よろしく!」
『え。だって今日委員決まったばっかで……!』
「だからその為に今日委員会決めしたんだろうが。」

…何という担任だ!もう帰りのホームルーム直前だぞ!?時間ぎりぎりじゃないか。色んな意味で!……
もちろん反論できるわけもなく、そのまま帰りのホームルームが終了。
沙雪に先に帰るよう伝えた後、藤原くんの姿を探すが……

『いない……。』

え!?何で!?どこに……。

「あ、なぁ。お前、拓海と同じ委員会だったよな?」
『いつき君?えっと……そうだけど。』
「拓海、めんどくさいから委員会でねぇってさー」

『…何て??』

「だからー。拓海はもう帰ったって。委員会でないらしいぜ。」


その時、私の中で何かが切れる音がした。


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ