short イニD夢話

□息抜き
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気温はいっこうに下がる様子をみせず、セミの鳴く声はどんどん大きくなっていく。


『そう言えば。私、受験生だった…』

その事に気付いたのは高校でずっと所属していたバスケ部を引退してからだった。

はっきり言って私は勉強が嫌いだ。
特に数学。

こういう時に兄がいて良かったと心底思う。

夏休みに入り、涼兄に励まされながら数学の克服に挑んでいたのだが…






『…微分…積分…るーと…』

死んだようにソファに突っ伏し、足をばたつかせる。

「……真琴、顔死んでんぞ。」

『さんへーほーのていり…インスウぶんかい…』

「…おい。大丈夫か…!?」

心配になり、そう聞いてみるがパタリと黙ってしまった。

こりゃ重症だな…

二階にある涼介の部屋に向かう。
「アニキー。入るぜ。」

「なんだ。啓介か。どうした?」

「いや、なんつーか。真琴がおかしいんだよ。」

「…いつもの事じゃないのか?」
「いや。だから、バカみたいなことしてるとかじゃなくて…
呪文みたいになんか唱えてんだよ。」

「…そうか。それぐらい、きついんだろ?勉強が。」

「…大学受験だったな、真琴。」

啓介は自分の時を少し思い出して、
そういやつらかったな…と改めて実感する。

俺はアニキと違って高校で成績が良かったわけじゃなかったしな。
むしろ、落とされて当然の成績に近かったような…

正直、へこんでた時がよくあったけど。真琴がケーキ買ってきてくれたんだよな…。
自分の小遣いで。


“啓兄!!涼兄にね、甘い物は気分転換にいいって聞いたから買ってきたよ!!”


「………アニキ、ちょっと出てくる。」

「あぁ。わかった。」

自分の部屋にいき、FDのカギをとる。

「真琴!!ちょっとこい。」

『…なに〜啓兄〜。』

「良いから来いって!」

たらたらとリビングのドアを開け、少し顔をだした真琴の手を掴みそのまま引っ張ってFDに押し込む。

『ちょ!!ちょっと!どうしたの!?啓兄!?』

「いいから。ついてこい。」

『だって…。まだ私しなきゃいけないことが…』

「今から俺といる間、そういう事は考えんな。」

『でも…。』

「大丈夫だっつってんだろ。」

がし、っと真琴の頭を一撫ですると諦めたのか静かになる。

数分後啓介がFDを止めたのはファミリーレストランの駐車場だった。

『何でこんなとこ………』
「降りろよ。」
『……。』

店にはいると、店員に案内されて窓際の席に座った。

そのまま、「どれか選べ」と啓介に差し出された目の前のメニューにはデザート、パフェのページ。

『え!?本当にどうしちゃったの!?啓兄!』

「うるせー。いいから早く選べよ。」

『……。じゃぁ、イチゴパフェ。』

すぐに店員を呼んで注文をする。
啓介はコーヒーをたのんだ。



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