short イニD夢話

□なんか目が笑ってないんだけど
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まだ3月だが今年に入ってここにくるのは三回目だ。

部屋に充満する医薬品の匂いにもすっかり慣れてしまって、それがさらにどれだけここにお世話になっているのかという事を思い知らされる。
一度捻挫すると、くせがついてしまって同じ所を捻挫しやすいと言うが、本当にその通りだ。


「真琴は…本当にどうしようもないな。」


黒い笑顔でサラリとそう言われると
今回怪我をしたと思われる箇所…
左足首を曲げられる。

『うわぁいだだ!!!いたい!いたいんでスけど涼介先生!!!!』

「やはり、捻挫だな。」

『わかってたならわざわざ確かめなくていいじゃないですか!!!』

ハハハ、と楽しそうに(本当に楽しそうに)笑う私の担当医、高橋涼介先生はまだ若手の医者で、それでも腕のたつ医者だというのは専らの噂。

「一週間激しい運動は禁止。あまり患部を暖めすぎないように。風呂に入るときは袋等で足を包んで…って聞いてるのか??」

『…キイテマス…』

「もし、言うことをきかなかったら…」

『わかってます!!わかってますから!本当に荒治療はやめて……っ!!』

以前、友達にこの病院を紹介したとき
あんなにかっこよくて優しい先生が担当とか羨ましい通り越して呪うわ。

と言われたが友達の言葉には語弊がある。
かっこいい…のは認めるとして、優しい?
あの鬼のような先生が??
注射は苦手だという私を無理やり押さえつけて笑顔で躊躇なく先端が光るそれを私の腕にぶっさした先生が?

やめてくれ……。
百本譲っても涼介先生は優しくなんかない…。

「……真琴…真琴…!」

『あ、はい!何ですか!?』

「…はは。一回殴っていいか??」

『すいませんでした。本当にすいませんでした。耳ダンボにして聞きます。』

この人患者の怪我増やしてどうすんだ…!!



笑顔の時が一番キレてると思う……。


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