私小説

□双子のヘンゼルとグレーテル
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『魔法の森』という名の森へたどり着いた俺は、そのまま森の奥の方へと、駆けだした。
地面は昨日の豪雨でぬかるんでいて、今にも滑ってしまいそうなほどだ。
それでも、走り続けた。海鈴を見つけるために……。
しばらく、走っていると、遠くに家らしきものが見えてきた。
近づけば、近づくほど家らしきものの正体が、何なのかはっきりとしてくる
ビスケットで出来た壁と屋根。
板のチョコレートで出来たドア。
家らしきものの正体はまさしく、『お菓子の家』だった。
「こんなところに、お菓子の家……もしかしたら、海鈴がいるかもしれない!」
そう思うと、ゆっくり歩いていられなかった。お菓子の家の前までくると、息をのんだ。
想像していたものよりも、大きかったから。 それでも、俺はドアを大きく開いて中へと足を踏み入れた。それから、家中を探したけど何も見つからなかった。俺の中で、不安が渦を巻いた。
ーーもし、誰かにつれていかれていたら……とか。
そんなことはない、と自分に言い聞かせ、お菓子の家を背に再び走りはじめた。 
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