私小説

□双子のヘンゼルとグレーテル
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「海鈴、何?」
「……」
もはや、何を言いたいのかすら分からない……。
分かってあげられない、双子のはずなのにーーごめん、海鈴……
「お母さんは、海鈴のことが嫌いなんだ……」
ようやく聞き取れた海鈴の言葉に、冗談で発言した言葉が、俺の中で蘇った。
ーー母さんが俺達を捨てるとか……ないだろうけどなーー
なんだか俺は、不安を覚えてしまった。
「海鈴……だ、大丈夫だ! 母さんが俺達を捨てるはずないから」
「海音の言うとおりだよね」
それを聞いていたのか「分からないわよ?」と、一言。
「まぁ、冗談だけどね」
「本当は、どうでもいいくせに!」
軽い口調の母さんとは裏腹に、海鈴は怒声をあげて家を飛び出していった。「どうするの、海鈴はああ言うの真に受けるタイプなんだよ!」
母さんからは笑顔が消え、俺はいつの間にか怒鳴っていた。
母さんはすぐに飛び出していった。俺は何もできずに、呆然と立っているだけだった。
「ごめん、海鈴。何も分かってあげられなくて」
そう、呟いたときある森の風景が頭の中を巡った。
海鈴と2人で『魔法の森』と勝手に名付けた、近所の森。
「そうだ、あそこなら!」
俺は、すぐに森に向かうため走り出した。
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