銀→青2
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「俺はあいつ……総悟から大事なもんを奪った。いや、奪ったってのは違うな。
そいつを総悟から引き離した揚げ句、俺からも遠ざけた。そりゃ酷い態度で接してな」
「……」
「だから、次総悟が大事なもんを見つけた時は全力で応援しようと思ってたんだ。それが翼だと気付いたのも、早い内だった」
「ほぅ」
ここでメフィストは気づく。酔っていながらも、先程の話の続きになっていると。
そうと分かれば少しだけ真剣に、土方の話に耳を傾ける。
「俺は翼のことをただの部下だとしか思ってねぇ。第一……まぁ、なんだ……その……」
「遠ざけた人が忘れられない、と?」
「……そんなところだ。
でも、だからこそ今回は大丈夫だと思ったんだ。総悟にも、やっと。
だが、お前が現れた。いきなり現れて、あっという間に翼を虜にしたんだ。
俺でもなく、総悟でもなく、お前がな」
「……」
「お前からそのことを聞いた時、俺は総悟の顔が見れなかった。
それに、あの日翼を一人動かさなければ、翼がお前に会うこともなかったのにと、また後悔だ」
「……」
「だが、俺は卑怯だ。総悟につけた傷を、総悟が幸せになることで少しでも癒えろと願っている。
それに……卑怯だから今こうやってお前の前で、激励の言葉じゃなくて愚痴を言ってるんだろうな」
全てを話し終えると、土方はまた笑う。それは明るいものでは決してなく、自らを嘲笑するような、悲しい笑みだった。