銀→青2
□39
3ページ/15ページ
「どうやら向こうの世界は、医療が発展していたみたいだな。
トシ、総悟、お前達その世界に行ったんだろう? 翼ちゃんが起きるにはまだ時間がかかりそうだし、その話をしてくれないか?」
「「え」」
近藤の提案に、包帯を巻ながら山崎も同意する。
「それいいですね! 俺も聞きたいです!」
「「……」」
目をキラキラさせる二人とは反対に、土方と沖田はあまり積極的でない返事をする。そして二人顔を見合わせ、「お前は?」等と言い合っている。
当然、近藤は疑問を抱いた。
「あれ? どしたの?」
すると、二人は何ともしれっと、近藤に言葉を投げたのだった。
「いや、近藤さん……話してやりてーのは山々なんだが……」
「話すほど向こうの世界のこと知らねぇんでィ」
「「え?」」
「「……」」
「「え?」」
「「……」」
「「えぇ〜!!!?」」
無残にも近藤と山崎は、土産話を聞くことが出来なかったのであった。
だが、それもそうであろう。二人が違う世界に行った時は、翼を取り返そうと必死だったのだ。
そんな時呑気に、
「ここはどういった世界ですか」
なんてことを聞けるはずがない。
そのため、ほとんど”無”という結果に終わる異世界情報。
が、
しかし一つだけ、土方の脳に残っていることがあった。
それは――――
「そういや、ピエロみたいな奴が言ってたな。
”名前はメフィスト・フェレス”
って」
ピクッ
この時、翼の指がほんの一瞬だけ、小さく小さく動いたのであった。