銀→青(短)
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今日は休日。
と、いうのに、外を見れば生憎の雨。
別に晴れていたからと言って格別嬉しいわけではないが、かといって休日の雨というのはどうもテンションが下がる。
それはこの男、勝呂竜士も同じことだった。
予習をしていたさなかに響く雨音。顔を上げれば目の前にある窓を、勝呂は長い間見ていた。
「……!」
が、その中であるものを発見する。そして発見した瞬間、勝呂は部屋から飛び出したのだった。
タタタと走り、向かう先は外にいる……。
「神崎先生!」
『! どうしたんですか? そんなに慌てて……何かありました?』
勝呂は思う。
雨だというのに外に立ち、ひたすらに空を仰ぎ見ている翼の方が、どうしたのだろうかと。
すると、勝呂の心境が分かったのか、翼は『あぁ』と言って口を開いた。
『雨が降っても、何もない空はやっぱり綺麗だと思いまして』
「空?」
勝呂はつられて空を見る。しかし、広がっているのは雨雲ばかりで、色もない。お世辞にも、とても綺麗とは思えなかった。
だが、翼を見れば目はどこか憂いを帯びており、紡がれる言葉も本心なのだと分かる。
勝呂は少しだけ、嘘をついた。
「そうですね、綺麗や」
その言葉はきちんと翼に届いたようで、翼はニコリと勝呂を見て笑う。
反対の勝呂も、翼の笑顔を見て思わず顔が緩んだ。そして、
パサッ
『! これ……』
「せめて今だけでも、使うてください」
翼の頭の上に、部屋を出る際もって来たタオルを乗せる。翼は遠慮して勝呂に渡そうとするが、勝呂は頑として受け入れない。
困った翼は、タオルを再び頭の上に乗せてお礼を言った。
『ありがとうございます、勝呂さん』
「……っいや」
すると、雨に打たれているというのに勝呂は耳まで真っ赤にする。本人はそれを隠さんと、急いで翼から目を離し、空を見た。
そして、思う。
こんな休日も、悪くない、と。
その後二人は、志摩と小猫丸に止められるまで外にいたのだった。