銀→青(短)
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『坊、隣座ってもどないですか?』
「は?」
ある日の塾の休憩時間に、それは起こった。
『だから、坊。隣座ってもどないしてん?』
「は??」
『……ちょっと待っててください』
「?」
スタスタと、勝呂から離れてどこかへ向かう翼。勝呂はいきなりのことで驚きながらも、翼に話しかけられたことが嬉しく、ついニヤニヤしてしまった。
「ぼ、坊って……」
更には独り言まで呟けば、勝呂はいよいよ一人の世界に入ろうとする。
しかし、イッツ・ア・勝呂ワールドに入らんとするその時に、勝呂の耳にある会話が入った。
『志摩さん、忘れてしまいました。勝呂さんに何て伝言したら良いんでしたっけ?』
「あはは〜まぁ無理もないわぁ。京ことばはややこしいからなぁ」
「……」
勝呂は知った。
全ては志摩だと……。
「志摩! お前何先生に伝言を頼んでおるんや!
それに、毎度俺の隣に座っとるやろ!!」
大声を出す勝呂に対し、志摩は声に出して笑うばかり。
翼が気を利かせて二人の間からズレれば、勝呂の目にはにっくきピンク頭が目に入った。
「大体お前は……!!」
「どぅどぅ、坊。落ち着いて」
「志摩〜!!」
『……』
ギャイギャイと騒ぐ二人を、今では蚊帳の外状態で眺めている翼。
このまま見ていてもただ暇なばかり。
そのため翼は、同じく遠くで苦笑いしている子猫丸の所へ行き、二人の帰りを待つのであった。