銀→青(短)
□09
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「……はぁ。今何時だ?」
コチリと調度音がしたその時計は、ただ今午前3時を示している。
「……」
案外時間の流れは遅いものだと、心の中でため息をつく。
いつもは後1時間程経って寝るが、今日はもうすることがない。ゲームのノルマもキリ悪く、たった今クリアしてしまったのだった。
「さて……」
さて、これから何をしようかと辺りを見回す。すると、奥で何やら動くものが。
「……まだ鍛練には早い時間ですよ、翼」
そう、例の如くあの浴衣を着た翼が、自分の部屋から様子を伺っていたのだ。
『あ、見つかっちゃいましたか……。
遅くまでご苦労様です、メフィストさん』
このだらし無くも面倒見の良い、メフィストの様子を――。
「いえ、私は何てことないのですが……あなたは何をしているのです?」
『……』
「……」
『……』
「翼?」
話があまりにも進まないので、メフィストは翼に問い掛ける。
すると翼は、一旦部屋に戻りすぐにまた出て来たのだった。
小さな箱を持って。
『私だけかもしれないんですけど……疲れた時は甘いものです!
これ……メフィストさんの顔はチョコで、接着部分はマシュマロを使いました。良ければ食べてください』
「……」
トスンと机の上に置かれた箱の中には確かに、チョコで作られたメフィスト像がある。マシュマロは見えないが、きっと複雑な所で使われているのだろう。
「私はアマイモンではありません」と危うく言いそうになれば、翼の眼力によってメフィストの手はチョコに伸びた。
そして――
パキンッ
『どう……ですか?』
「……悪くないですね」
メフィストが自分でさえも驚くような、率直な感想を述べることになるのだった。
その後、目の下に隈をつけて『良かったー!』と喜ぶ翼を見てメフィストが微笑むのは、また、別のお話。