銀→青(短)
□08
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その日メフィストの部屋には、緑頭のツンツン髪の毛が特徴のアマイモンがいた。
メフィストはゲームを、アマイモンはいつも通りお菓子を貪っている。
しかしそこでアマイモンは、お菓子を口に運ぶ手を止め、メフィストに唐突に問う。
「兄上、”面目ない”と”お見知りおきを”の意味を教えてください」
「……」
物質界に来てまだ間もないアマイモンが、なぜそのような難しい言葉を使っているのか。
「どこでそんな言葉を知った」
「翼です」
以前アマイモンが翼と接触しているのは、翼の証言から分かっている。
故に、アマイモンからその答えを受けて驚くことはなかった。
メフィストはただ眈眈と答える。
「”面目ない”は所謂、ごめんなさい。
”お見知りおきを”は所謂、これからよろしく、だ。
だが、こんな難しい言葉……アマイモンにとっては聞き損だろう」
だがアマイモンは、「へーそうですか」と自分が質問したにも関わらず、興味なさそうに返事をし、もうお菓子を食べ始めている。
「……言い損だったか」
メフィストはため息をつく。しかしそれと同時に、アマイモンがまた手を止めた。
また仕様もないことを思い付いたのだろうとメフィストが思えば、アマイモンが口にしたのはこんなこと。
「兄上、これからもお見知りおきを」
使い方が明らかにおかしいのはもうツッコまない。メフィストは、いつものように紅茶を飲む。
そして一息ついたと思えば、
「もう嫌というほど知っている」
と顔を歪めて呟いたのだった。